アメリカ公立学校での夏休みの過ごし方

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2014.07.11

アメリカ公立学校での夏休みの過ごし方

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■ 連載:アメリカの公立学校での夏休みの過ごし方
■ 連載:「聞く」と「分かる」の関係:
■ あとがき:早口の英語の方がよく分かる!?
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■ 連載:ボストンからの発達障害レポート 第8回
-アメリカの公立学校での夏休みの過ごし方
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久しぶりのレポートです。もう7月も半ば、あと1か月もすると夏休み。
そこで、アメリカの公立学校の夏休みについてお話したいと思います。

アメリカの多くの州では9月が年度始めで、6月の半ばに年度最後の修了式となります。その後は新しい年度の始まる9月始め(多くは9月第一月曜のLabour Dayの次の日の火曜日)まで夏休みとなります。なんと、夏休みが2ヶ月半近くあるのです!

その間、子供達は何をしているかというと、家族で過ごしている子もいますし、旅行に出かける子もいます。

※余談ですが、親御さんの海外赴任で長期アメリカ滞在をしている子や、日本人のハーフの子で日本語を鍛えたい子は、アメリカの学校が夏休みに入ると同時に日本に飛んで、日本の学校が夏休みになるまで通う、という子もいるようです。

ただ、2ヶ月半もの長い期間、家だけで過ごすのは親御さんにとっても子供にとっても大変なので(特に両親ともに働いている家庭では)、「サマーキャンプ」と呼ばれる、日本の学童保育のような所に通う子が多いようです。ボーイスカウト、ガールスカウトもこれと似たような位置づけです。

サマーキャンプは、一週間単位で申し込める所が多く、サッカーやスイミング、体操などのスポーツに特化しているところもあれば、美術や洋裁などを教えてくれるところもあります。また、異文化交流として、海外から研修にきている同年代の子供と過ごし、それぞれの文化を紹介するプログラムもあります。午前中だけのプログラムもあれば、一日中のプログラムもありますし、文字通り宿泊するキャンプもあります。

内容によって料金は様々ですが、一日30ドルから80ドルくらいはかかります。結構なお値段ですよね。

今の季節になると、同じ色のTシャツを着た子供たちが2~30人の集団で公園や野球場にぞろぞろと入っていくのをよく目にします。

特筆したいのは、Special Needsの(特別な支援が必要な)お子さんでIEPs(Indivisualized Educationl Plan)で必要と設定されていれば、そのサマーキャンプの料金が無料ということです。また、スピーチセラピー、ABAプログラム、作業療法、運動療法など、通年を通してすることが望ましいものは、夏休みの間もちゃんと提供されます。ただし、時間に関しては、夏休み期間中は午前中だけ、午後の2時間だけ、夕方以降の延長はなしなど、短めのものがほとんどのようですが、、、

さて、それでは公立学校の先生たちはこの2ヵ月半の夏休みの間どうしているのでしょうか。日本の場合、夏休みの方が多少のゆとりはあるかもしれませんが、お盆休暇や土日を除いて、ほとんどの先生が学校に出向き、部活動の指導、事務、教材研究、もしくは外部での講習会などに勤しんでいると思います。では、アメリカはというと(厳密に言うと州によって違うかもしれないので、マサチューセッツ州では)公立学校の先生は、そのものずばり、夏休みなのです。

しかし、2ヵ月半まったく働かず、一切の仕事をしないという先生は少ないです。日本人には、アメリカ人は「仕事は仕事、プライベートはプライベート」と完全に割り切っているというイメージがありますが、教育の仕事に就いている多くの人は、持ち帰りの仕事があるもの、と考えているようです。

新年度に向けての年間スケジュールや年間カリキュラムの見直し、Special Educationの先生ならば、次年次に受け持つ生徒のIEPsの確認作業をしたりします。加えて、アメリカの多くの州では教員免許の維持のために、大学や大学院での授業を取ると定めていますから、夏休みの間にこれらの授業を受ける先生も多いようです。

それでも、2ヵ月半も授業時間に縛られることなく自分で仕事のペースを管理できるシステムは、ちょっと羨ましいなと思いますよね。
(余談ですが、先生のお給料は、アメリカのほとんどの企業でそうであるように年収です。例を挙げると、マサチューセッツ州ボストン市の公立学校の大学卒の教員の、初年度のお給料は年間49,000ドルです。)

いかがでしたか。
アメリカの夏休みの様子がお分かりいただけたでしょうか。
これからが夏本番ですね。
皆様も暑さに十分お気をつけてお過ごしください。

(礒恵美)

 

■ 連載:「聞く」と「分かる」の関係 第7回
英語脳を創る!?
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2020年の東京オリンピックを控え、日本はグローバル化に大きく舵を切りました。先に行われたG7外相会議を例に挙げるまでもなく、日本以外の外相はキレイな英語でスピーチを繰り広げていて、英語は国際交流のための必須の道具であることは疑いようもありません。

小学校高学年での英語教育はすでに始まっています。将来、小学校3年生からとより低年齢化し、中学校以上では、英語で授業を実施することさえ検討されています。

英語脳を創るのはもう待ったなしです。

幼少期~思春期に数年以上海外の英語圏で生活した人の多くが、ネイティブばりのきれいな発音の英語を操ることができます。ところがその両親の英語の発音はなんだか訛(なま)ったみたいなままで、そうした癖をなくしてしまうのは難しいようです。言語の種類は異なりますが、中国在留孤児のように幼少期に日本語をしゃべっていた人でも、50年以上日本語を使わない環境に置かれてしまうと、すっかり日本語を忘れてしまいます。

きれいな英語を話すことのできる帰国子女と、その両親の違いはどこにあるのでしょうか?

ここでは私の外来を訪れた2人の事例を紹介し、第2言語としての英語の獲得について考えを整理し、提案してみたいと思います。

1人目は、学校で構音障害疑いと言われ、診察を受けるように言われたお子さん、2人目は、自分の担当する子どもたちの英語が聞き取れず、うつ病になってしまった小学校の先生です。

事例1:滑舌(かつぜつ)不良と言われた帰国子弟 6歳。

主訴:発音の歪み、構音(こうおん)障害? 滑舌が悪い?

聡明な顔立ちの男の子が母親につれられて私の外来に訪れました。母親が手にする要受診の書類には、「保護者の方へ【診断】構音障害の疑い 発音・音声の異常が認められます。耳鼻咽喉科で精密検査と治療を受けてください。XXX小学校 校長 XX XX」と書かれています。親御さんは「子どもはどこも悪くないでしょう。今まで幼稚園でも家庭でもことばのことでは何も問題なかったんです。なんでこんな紙をもらうでしょうか?うちの子は病気ですか(・0・)」と憤りと不安まじりな状態でした。

さっそく純音聴力検査と鼓膜インピーダンス検査を行いましたが、異常はありません。そこでさらに語音聴力検査を行いましたがこれも問題ありませんでした。そこで語音検査を今度は、答えを書き出させるのではなく復唱させる方法で行いました。そうすることで言語聴覚士に構音チェックをさせたのです。すると「し」や「す」の音の発音に歪(ひず)みのような音が混ざることが分かりました。「さしすせそ」の発音の時に、舌を上下の歯に押しつけたり挟むような動きをさせて発音していることが観察できたのです。

私 「お子さんは帰国子女ですか?」

母親「いいえ」

私 「お父さんは英語圏の方、あるいは英語が母語の人ですか?」

母親「いいえ・・・。でもうちの子どもは年数は少ないけど帰国子女みたいなものなんです。2年だけでした。私たち両親は関西人で、主人の仕事の関係で家族でNZに行きました。就学のタイミングで帰国して、千葉市の公立の小学校に入学させたんです。」

私 「現地での日本語は?」

母親「子ども語学力アップを考えて、現地校の幼稚園に入れました。家庭も英語で、どっぷり英語漬けにしていました。」

私 「なるほど、なるほど。で、今回、学校の先生からは、どんな発音の歪みがあると指摘されましたか?」

母親「(おいしい)と発音するときに(おうぃすうぃ)となるみたいです。サ行の発音が特におかしいと言われました。」

私は、自身が妻子(当時3歳と5歳の娘)をつれて留学した経験があったのですぐさまその問題の根っこに気が付くことができました。
そしてすぐさま受診しているお子さんに質問をしたのです。

私 「ボク、Oh Sweet!って発音してごらん。じゃあこんどは美味しいを発音してみて。」

ボク「おぅすうぃーっつ、おぃすぃーっつ」

母親「( ゜Д゜)??、、、、(*^_^*)」

このお子さんは、英語ベースで日本語の「美味しい」という発音を覚えたために、「うまい、うめえ、おいしい」というカテゴリーではなく「Oh Sweet!」の仲間として「美味しい」ということばを耳から学んだのです。外国人が日本語を覚えるときと同じような、英語訛りの日本語発音になっていたのです。

日本語の音素は「あ」「い」「う」「え」「お」の5つの母音に9種の子音ですが、欧米の言語は母音が6つ以上ありますし、子音も30個以上あります。さらに困ったことにわれわれが多用する9種の子音は、彼らがよく使う頻度の高い子音と異なっています。例えば、日本語のサ行は1つの[s]で表現されますが、欧米の子音なら? f θ s c x χ など※、実に多様にサ行を使い分けることができます。「おいしい」という日本語よりも、先に美味しいものにありついてそれをほおばりながら「Oh sweet!」としゃべることの方を先に覚えてしまいました。意味カテゴリーを優先して聞こえたままに学習するのではなく、聞こえた音を音韻カテゴリーでひとくくりにしてしまい、美味しいの発音が、歪んでしまったというわけなのです。

※編者注)発音記号は特殊文字なので、元の原稿からいくつか音を割愛しています。ご容赦ください。

「たくさんの種類の[s]を使い分けられる耳と口を持っていることはすごいことです。これは将来の語学力につながる、ある意味天賦の才です。変な矯正をすることは、それがトラウマになってマイナスになることもあります。親がもっと自信を持って育ててあげてください。友達との会話の中でそうした発音の歪みは自然に落ち着くところに落ち着くから気にしなくていいです。学校の先生にはわたしからそのことを伝えておきます。」と、診察を終えたのです。その後、彼はバイリンガルな才能を損なうことなく順調に学校生活を送っていると聞いています。

事例2:子どもたちの英語が聞き取れない英語教師(60歳女性)。

主訴:子どもたちの英語が聞き取れない。難聴なら補聴器をつけたい。

小学校の英語クラスを受け持つ60歳になる英語教師が、子どもたちの英語を聞き取り難いということで私のところを受診されました。英検は1級で教歴もみごとで絵に描いた見本のような優等生の先生でした。しかし、その先生の訴えは深刻です。

教師「休み時間中に子どもたちが英語で話しているその輪に入っても、彼女たちが何を話しているのか聞き取れない。おそらく老人性難聴になっているから、先生に検査や診断を頂いて、補聴器の処方せんもお願いしたい。」

そこで、純音聴力検査など、聞こえの精密検査を一式行いました。ところがこの先生の耳は地獄耳でないかと思えるほどによく聞こえている。同世代と比べても明らかに聞こえている、そんな元気な聞こえの耳だったのです。検査音や日本語は聞こえるけど、子どもたち同志の英語での会話は聴えない。

私「これは難聴のせいじゃないので補聴器をつけても聞こえるようにはなりませんよ。教室で教えているときその子たちはどんな反応ですか?」

教師「その子たちは成績はいいんです。たぶんクラスでもトップのグループの子どもたちです。でも、最近は私の教えているときは私語が多くて困っています。」

私 「他には・・・?」

教師「その子たちは帰国子女のグループなんです。あるとき休み時間にその子たちのグループに混ざって会話しようと思ったんです。ところが彼女たちがこちょこちょと話している「子どものしゃべっている」英語が全く聞き取れなかったんです。それ以降、子どもたちは私の授業を真剣に受けてくれなくなったんです(T-T)」

私 「くり返しますが、検査の結果、難聴という内耳レベルの問題は認めません。これはより高次のレベル、例えば認知レベルにおけるエラーによるものです。英語圏の子どもたちは、耳でたくさんの音素を識別できても、幼少期はそれをクリアな発音で区別して発信することが出来ません。そんな少しぽわんとした感じの発音のことばをスポンジーワードと言います。その音は第II外国語として英語を扱っている大人から見れば変な発音に聞こえるかもしれませんが、母語として扱っている人はそうした少しぼけた発音でも単語
としての聞き分けはしっかりできるんです。ですから、母語として学んでいない人は、この手の言語の学習はすごく難しいと思います。」

教師「私は英検1級です! なんでそんな変な役に立たない発音まで覚えなければならないのですか(`ε´) (バン!)」

その後、その先生は外来を受診することはありませんでした。

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英語脳を創るには何から始めるべきか・・・。

○パスバンド
母語として使われる言語には、それぞれに固有のパスバンドがあります。
パスバンドとはその言語が多用する周波数帯のことです。例えば、JRの通勤電車の中での電車の引き起こすノイズは日本語に対してはマスカー※として作用しますが、英語の場合は日本語に対するほどにはマスキングしません。
だから日本人同士で車両の左右の席に向かい合って会話するのは、よほど大きな声を出さないとダメですが、英語ならそれほど大きな声でなくてもお互いが会話できたりします。それほど言語によって多用する、あるいは重視する周波数は異なるのです。

※編者注)邪魔をするもの

異国に移住すればすぐにその現地のことばを身につけられる。そういう話はよく耳にしますが、おそらく言語のもつ固有の周波数帯が形成される一番の要因として、環境や建築やインフラといった要素が大きく関与しているのでしょう。

○音韻カテゴリーの形成

母語として使う言語の周波数帯域が決まれば、その次はその帯域をいかに効率よく分割して、ことばとして使う音素のカテゴリーを確立するかということになります。例えば日本語は、あいうえおの5つの母音を250~1000Hzと1000Hz~2000Hzの周波数で処理します。母音のもつ2つのフォルマント※のF0とF1の成分の特徴を押さえることで、どちらかの周波数帯かが聞こえればなんとか聞き分けられます。日本語は音の低域から中音域にそんな使い方をしているのです。そして1500~3000Hzを子音の識別に利用して、50音を聞き分けます。英語の場合、子音は日本語に比べると驚くほどに多様です。そしてそれらの音を彼らの耳はしっかりと聞き分けています。聞き分けのポイントはこのカテゴリー化といえるでしょう。

※著者注)フォルマントWiki はこちら>>

AKB48を48人の若い女の子のグループと記憶するか、柏木由紀・大島優子・市川愛美・森脇由衣・などなどと区別する気持ちが必要です。幸いなことはこうしたカテゴリー化は頻度に依存して形成されていくので、パスバンドさえ完成させることができれば、あとは英語の洪水の中に身を置き、さらに聞き分けられないと困ってしまう状況(異国にひとり放り出される)になるだけで、自然に音韻カテゴリーが形成されるでしょう。

○プロソディ知覚

音声言語は、呼気と声帯振動と構音器官の調節によって展開されます。この呼吸のリズムやブレス(息継ぎ)のタイミングによって、単語や文といった区切りが生み出されます。しかし、実際の音環境にはいろんなノイズがあるので無音部分の検出は容易ではありません。そのためにわれわれはことばのうねりや抑揚のパターンをテンプレートとして記憶し、その情報から単語や文のブロックの識別をしていきます。英語らしいリズムで発音する練習をすることは相手の聴き取りやすさだけでなく、自分の聞き取りやすさと聴き分りやすさにつながっていきます。

○ Use it, or loose it.

どんなに身につけた知識や経験であっても使わなければ劣化します。自然体得に必要な刺激の曝露(ばくろ)時間は5時間以上と言われています。1日5時間以上英語に曝(さら)されることと、上述したポイントに心を配ることで英語脳が創られていくのです。

(中川雅文・国際医療福祉大学教授、同大学病院耳鼻科部長)

 

■ あとがき
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今号は、はからずも英語関連の話題が2つになりました。
英語に関して、私自身の経験とそこでの発見を紹介させていただきます。

私は大学受験の英語に苦労し、他の教科の点数で補って、なんとか合格できた次第です。そこで、大学に入ってから英会話の学校に入りましたが、なかなか上達できず、あきらめたような状態でした。

ところが就職した後に、マサチューセッツ工科大学(MIT)で開発された、子どものためのプログラム言語Logo(ロゴ)を担当することになってしまいました。27歳の時に上司と一緒に渡米し、通訳の方に助けられながら大学やベンチャー企業の人たちと交流したのですが、なんとなくぎくしゃくした感じが続いていました。そこで、下手ながらも直接、英語で話しかけると、相手が態度を一変して対応してくれました。最初は上司もよい顔をしませんでしたが、次第に容認されるようになり、何度目かからは私が直接会話で交渉することを許されるようになりました。

なぜ、あれほど苦しんだ英語が聴き取れ、話せるようになったか、その理由が認知機能の研究で分かったような気がします。

それは、英語のスピードです。ボストンやニューヨークなど、私が仕事で主にいった東海岸の人の英語は、他のエリアの人に比べて早いです。ですから大量の語句が一度に耳に入ってきます。英語力のない私には、それらをすべて理解することはできませんから、キーワードを探して、それを頼りに理解しようとします。それが英語が聞き取れるようになったきっかけではないかと最近、気がつきました。

以前も紹介しましたが、認知テスト等で私自身にADHDの傾向があることが指摘されています。つまり、ワーキングメモリの容量が不足している訳です。
学校での勉強や英会話の学校では、聞き取れるようにゆっくり、きれいなイントネーションで話してくれます。私にとっては、それらの英語は情報量が多すぎて、これまでは処理しきれなかったのです。それに対し、東海岸では早口で膨大な情報の英語が流れますから、私にできる要点だけを聞く、という、ワーキングメモリの少ない自分にとって可能な英会話の方法を身につけることができたのではないかと考えています。

明日明後日は、幕張で開かれる国際研究会に参加します。ニュージーランド、ミャンマーなど、外国からも参加される方がいらっしゃいます。さびつきかけた英語のブラッシュアップのよい機会になればと考えています。

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