手話と幼児教育

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2013.05.31

手話と幼児教育

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■ 連載:視覚機能の知見を活かした授業つくり・2
■ 連載:ボストンからの発達障害レポート 手話と幼児教育
■ 書籍:クラスで気になる子の サッとツール&ふわっとサポート 333
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■ 連載:ビジョントレーニング 第9回
視覚機能の知見を活かした授業つくり・2
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前々号No.68に掲載した、南あわじ市の湊小学校の取り組みの続きです。

教材「うつしまるくん」※を使って文字を書き写すことにほぼ全学年で取り組んでもらいました。その中で10分間に100字写すことができない子がいました。1分間に10文字も写せないことになります。この状況で「黒板の字を写しなさい」と指示をしてもとても難しいということです。

※光村図書出版の学校向けプリント教材。手本を見て写すことを通し学ぶ。
★詳細はこちら>>

視覚機能の評価については個別には難しいということもあり、このような写し教材を使って限られた時間に何文字の字数を写すことができたのかということを一つの目安にすることもできます。写すときには眼のすばやい運動の力が必要になるからです。また文字の形をすばやく認知する力も必要になります。

また「学級に視覚機能の弱さを持つ児童がいる場合、個別にトレーニングを行うよりも学級全体で取り組むほうがよい」という平見幸子先生のお話もあり、一部の学級では自分の指をつかって眼球運動トレーニングを行いました。

1.跳躍運動:
左右の指を30センチくらいにはなし、交互に見て、上下、左右、斜めの眼のジャンプの練習を行う(苦手な児童は頭が動いたり、眼が途中で止まることもある)。

2.追従運動:
親指を直径40センチくらいの円を描くように動かし、眼で追い、円方向に指を眼で追従する運動を行う。

3.輻輳運動:
指を眼と眼の間に近づけ、寄り眼をしながら見る。できるだけ両眼を寄せて指を見る。理想的には両眼の黒眼が眼の内端まで寄る。近くを長く見るときの余力になる。両眼が上手く寄らない児童は近くのものを長く見ると眼が疲れやすくなったり、二重に見えることがある。

4.黒板にランダムに数字を距離を空けて書いておき、教師の指示した数字をすばやく探して見る(顔は動かさないようにする)また数字の順に眼を動かして見ていく。

5.ランダムの数字表を黒板に書いておき、左から右に順に横方向に読む。一文字飛ばしで読んでいく。縦方向に読んでいく。端の文字だけ読んでいく。

学級全体で取り組むと、得意不得意がある程度明らかになってしまいますが、眼の動きは筋トレと同じです、という趣旨で「鍛えて伸ばそう」とみんなで前向きに取り組むことができました。筋肉と同様に鍛えればはっきりと出来るようになっていくので、年間を通して差別的な発言が出ることはありませんでした。

このような視覚機能のトレーニングを通してどのような成果が出たかということを振り返っていただきました。

1.4年生Aくん
眼球運動トレーニングがスムーズにこなせるようになってきたくらいから、とくに視写教材ではっきりと効果が現れました。1学期では10分間で91字の視写でしたが、2学期の中ごろには169字に伸びました。また教科書などの読みで読み飛ばしや読み間違いがずいぶん減ったことで、速く読めるようになり、学習への参加がかなり増えました。漢字学習の意欲も伸びました。昨年度ミニテストで平均10点くらいだったのが、60点前後まで取れるようになりました。100点を数回取ることもできて、保護者とともに大喜びしました。

2.4年生Bくん
眼球運動が極めて苦手でしたので、3桁×3桁のかけ算でパニックになっていました。そこで1桁ずつ筆算の横に計算式を書いてもらい、写してもらうことで計算ができて、自信が持てるようになりました。保護者や学習塾でも複雑なものを見やすくなるようにする指導を理解していただきました。

3.4年生Cくん
眼球運動が苦手で三角定規を使って平行・垂直線を描く作業ができませんでした。定規の辺と直線を合せることができなかったのですが、三角定規の3辺に色をつけたりすることで直線と三角定規の辺を合せることができました。また漢字も書けば書くほど違う字になっていく傾向もあったのですが、すっかりなくなりました。

4.5年生Dくん
社会の教科書のたくさんの字を見た段階でもう学習に意欲を示すことができなくなっていました。そこで学習に必要な部分をあらかじめマーカー線で引いておくなどの支援をしました。大事なキーワードに眼が留まるようになるなど落ち着いて学習に参加できるようになりました。

視覚機能のトレーニングを行って、能力を上げることと教科書などを見やすくする支援の両面から上手く支援をしていただきました。困っていた子どもたちも困り感を理解してもらえただけでも、ずいぶんと学校に行きやすくなったのではないでしょうか。

湊小学校では、これらの取り組みを通じて視覚機能の知見を活かした指導について自信を持って、今後も取り組みを続けていただけるようです。さらにこのような取り組みをしてくださる学校が増えて、救われる子どもたちが増えることを希望いたします。
(北出勝也)

北出先生のサイト:視機能トレーニングセンター「ジョイビジョン」 はこちら>>

 

■ 連載:ボストンからの発達障害レポート 第3回 手話と幼児教育
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アメリカの幼児教育現場では、聴覚障害に関わらずコミュニケーションの一つとして、自然に手話を取り入れています。特に、2歳前くらいの子どもで、伝えたいことがたくさんあるのに言葉を思ったようにアウトプット出来ない子たちが、伝えられないイライラから噛みつきなどの行動にしないために、「言語」の一つとして教えます。そのため、デイ・ケアや保育園の教職員、小児科医、心理士、ソーシャルワーカーなど、幼児に関わる職業では手話を流暢に「話せる」人がたくさんいます。

皆さんご存知の様に、アメリカには多人種が集まっています。一見同じ白人であっても、ドイツ系、イタリア系、フランス系などルーツの違いもありますし、ここボストンではメイフラワー号でアメリカに降り立った初期移民というアイデンティティも存在します。その他にも南米系、アフリカ系、アジア系、カリビアン系など、見た目だけでは分からないそれぞれのルーツがたくさんあります。

当然、夫婦が異なるルーツを持ち、英語以外の言語を話せば、子どもが生まれながらにして2言語以上に触れる環境で育つこともしばしば。私が働く園では、夫婦の会話は英語で、お父さんとお母さんはそれぞれの母国語のみで子どもに話しかけるという家庭もあり、その子は3歳ながらにして3ヶ国語を使い分けられます。

言語の習得過程はそれぞれですが、一般的に子どもが2言語以上に触れる機会が日常的にあると、話し始めるのが遅めになると言われています。言いたいことがあるのに言えない、伝えたいことが伝わらない。子どもにとってはとてもストレスですし、親御さんや教師にとっても一生懸命話しているのにそれを分かってあげられないのは心苦しいものです。

それを解消する一つの方法が手話ということなのです。Baby Sign Language と言って、乳幼児用に手話を簡単にしたものを用いる場合もあります。

主に使うものとして・・・・お母さん、お父さん、牛乳、水、もっと、プリーズ、ごめんね、ありがとう、歌(音楽)、食べる、ヘルプ、りんご、バナナ、ストップ、おしまい、本、など等

当然、完璧に手話ができないことも多いですが、そのうちに言葉も同時に発するようになるので、意思疎通がより良くできるようになります。十分に話せるようになってからも、歌や童謡を手話でも導入してあげることで、3歳くらいまでには簡単な文単位で手話ができる子もいます。

ずっと手話の学習を続けられなくても、基本的なものが分かれば、後に役立つこともあるし、流暢に手話ができるようになったら、話せる言語が増えるのと同じですから、やはり世界が広がりますよね。

そしてこの手話は、幼児教育のみならず、コミュニケーションに障がいを抱える子どもたちとの会話にも応用ができます。絵カード同様、手話を使ってコミュニケーションをとることができます。絵カードは必要な分だけ持ち歩く必要がありますが、手話だったら身につけてしまえば、身一つでできますよね。

乳幼児用手話のアプリもたくさん出ています。手話は各国異なるので、アメリカ英語と日本語にも当然違いがありますが、参考になる点はあると思うので、ご興味ある方はぜひ一度お試しください。

○アプリ
・Baby Sign (ASL) Free-American Sign Language
★itunes preview(英語)はこちら>>

・Sign Language!
★itunes preview(英語)はこちら>>

○You Tube動画
・Baby Sign Language-Sign Language for Babies
★動画はこちら>>

・Baby Sign Language Introduction-My Baby Can Talk
★動画はこちら>>

(礒恵美)

 

■ 書籍:クラスで気になる子の サッとツール&ふわっとサポート 333
-LD、ADHD、高機能自閉症を持つ子が教えてくれた
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「ズバッと解決」をキーワードに、特別支援教育に携わる達人たち(教師や教育研究者)をネットワーク化し、教室で起きている「学びにくさ」の解決に取り組んでいる阿部利彦先生の書籍です。たくさんの達人のノウハウを、新学期から3月までの時期と、国語や算数など教科別という2つの切り口から整理した、これまでの集大成ともいうべき一冊です。

例えば、4月:新しい出会いや出発を援助する、9月:休み明け、教室での配慮といった章立てで分かるように、子どもたちの置かれる特別な状況に教師が対応するための方法が解説されています。

また教科別では、国語で指示はゆっくり、はっきり、簡潔に、さらに「ここがポイントですよ」と告げて要点を際立たせる、といった、取るべき態度を解説しています。算数では、授業の流れを構造化(復習-問題提示-考え-まとめ-問題練習)して今、何をやっているのかを子どもたちに理解させることを解説しています。

最大の特徴は、文章全体が、231の「ふわっとサポート」と、102の「サッとツール」の文章に分かれている点です。サポートでは、子どもたちと接する際の配慮事項や環境調整の仕方が述べられています。ツールでは、例えば、読みの際に使える「1行定規」や、写真入りタイムスケジュールなど、子どもたちが学習や学校生活で困る点を解決できるアイデアツールが紹介されています。教師だけでなく、子どもと接するすべての人に知っておいてほしいヒントが満載です。

サッとツール ふわっとサポート 333
-LD、ADHD、高機能自閉症を持つ子が教えてくれた 阿部利彦著
ほんの森出版学館、2009年7月発行、B5判、112ページ、1800円(税込別)
★詳細はこちら>>(立ち読み機能あり)

 

■ あとがき
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手話にはいろいろな可能性があることを、今回のボストン・レポートが示してくれました。私が審査員を務める、全日本中学高校Webコンテストでプラチナ賞をとった作品は、こちら
次回メルマガは、6月21日(金)とさせていただきます。

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