川上康則講演「子どものつまずきから考える指導と支援」

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2013.05.17

川上康則講演「子どものつまずきから考える指導と支援」

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■ 報告:川上康則講演「子どものつまずきから考える指導と支援」
■ グッズレビュー:携帯筆談器 COBO(コボ)
■ イベント:初夏の注目セミナー
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■ 報告:川上康則講演「子どものつまずきから考える指導と支援」
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1.はじめに
特別支援学校教諭として直接子どもの指導をしながら、特別支援教育コーディネーターとしても港区、渋谷区、目黒区の通常学級や特別支援学級からの相談に乗るという、川上康則先生の講演に参加しました。主催は、10年以上前から特別支援教育の研究に取り組んでいる東京コーディネーター研究会及び全国コーディネーター研究会です。

川上先生は「ズバッと解決ファイル」という一連の書籍やWebで、阿部利彦・星槎大学准教授らと共に、学校での発達支援の具体的方法を解説する達人として有名です。
★プロフィール(ブログ)はこちら>>

2時間に及ぶ充実した講演で全容を紹介するには紙面が不足ですので、編者がポイントと考える点に絞って解説させていただきます。さらに詳しく知りたい方は、川上先生の著書及びズバッと解決シリーズをお読みください。

『〈発達のつまずき〉から読み解く支援アプローチ』 川上康則著、学苑社
★詳細はこちら>>
『クラスで気になる子の支援 ズバッと解決ファイル 及び 同 NEXT LEVEL』 阿部利彦編著、金子書房
★詳細はこちら>>

2.「うまくいかなさ」の背景を考えると、その子の「価値」が見えてくる
担任教師からは「話を聞かない(理解できない)」「頻繁な離席」といった困った点が上がってくる。それらは子どもの特性からくるもので、やむをえないという視点も必要である。

例えば、話を聞かない、聞きもらしが多い子は、ワーキングメモリが弱く、覚えきれないと考えることができる。そんな子が先生の指示を聞き取れたとしたら、すごいことと考えることができる。頻繁な離席をする子は、聴覚情報の取捨選択が弱く、クラスの騒がしさが聞き逃せないと考えられる。あるいは、注意集中の持続が短いとも考えられる。そんな子がじっと話が聞けたら、そうとう頑張っていると考えることができる。

一人ひとり、問題のある部分はあっても、それ以外の部分をより大きくすることで、その子の「価値」を高める、という考え方が大切である。

3.苦手さを克服する3つの方法
(1) 服薬(コンサータ、ストラテラ等)
注意が続かない子、多動が抑えられない子は、ドーパミンなどの神経伝達物質が出にくいタイプである場合がある。これは先天的なものなので、努力をするというよりも服薬でその物質を補うという発想も大切である。

(2) 社会的報酬(social reward)
「ほめられる」ことが多くなると、ドーパミンの分泌が活性化する。その子の特性を知り、できたこと(その子にとってはがんばった結果)に対して、適切にほめて、自尊感情を高めてあげることが大切である。

(3)その子の特性を活用する関わり
発達障害や脳の機能に関する知識を、子どもの日常場面での理解に落とし込み、その子がやりやすい状況を作ってあげることが大切である。(ハードルを高くし過ぎないことがポイント)

全体的な能力や技術をほめるより、具体的な「行動」についてコメントする。がんばりのプロセスをほめる。成長や変化をほめる。

逆に、反発を強める三大禁じ手に注意。
・強い指導 ・頭ごなしに叱る ・押さえつけ

4.保護者は学級経営の重要なパートナー
子どもの特性の早期発見・早期対応は特別支援教育の成功のカギ。だから、保護者に障害受容を促し、一緒に協力して取り組んでもらいたい。

だが、保護者はすでに十分にがんばっている。だから、「頑張ってね」ではなく「頑張ってますね」の言葉が大切である。

保護者を支援し、その力を発揮してもらうには、
(1) 子育ての原動力=「わが子 かわいい」
・こんなわが子を「かわいい」といってくれた
・わが子の「かわいさ」に気づかせてくれた

(2) ともに考えてくれる人(教師)がいる
・「頭ごなしの指導はされないんだ」と安心した

(3)その親子の「歴史」を尊重する
・「今までやってきたことに、自信をもって」と言ってくれた
・誰にも言えなかった「育てにくさ」に耳を傾けてくれた

(4)SOSを出せる、解決の糸口を示してくれる
・私ができる「具体的なやり方」と「見通し」を伝えてくれた

5.タイプ別対処方法
(1) 対人関係がうまくいかない子
・自分の気持ちに素直に行動すると「空気がよめない」と言われてしまう
・理由が「わからない」という不安
・どうして誰も教えてくれないのに、みんなは分かっているんだろう
→会話がかみ合っていないようだが、本人の立場に立てば、筋は通る。コミック会話法などで見えない「空気」を見せて、本人に理解してもらう。
※「コミック会話」キャロル・グレイを立ち読みはこちら>>

(2)こだわりがある子
認知発達とともに、こだわりも発達する
・初期感覚:  常同行動
手をヒラヒラ、水遊び、あご打ち、クルクル回る
・視覚: パターン化
物の位置、並び方、手順・道順、予定変更のいやがり
・対人意識: 一番病
勝ち負け、最後までやりきる、場面の切り替えが困難
・職人気質・信念の域
鍋奉行、芸術家、素材にこだわる料理人、ズボンやスカート丈
→「こだわりをなくす」のでなく、尊重しつつ、「別のルート」でも解決できる経験を加える。

(3) 姿勢が悪い、不器用、運動がぎこちない子
原因は、性格、経験、家庭環境、体力低下等ではなく「固有感覚」の調整力不足による「低緊張」
→「姿勢が悪いと叱る」だけの一過性の関わりでなく、よい姿勢を教える等(後ろに手を回し、腰に手をあてる)持続性の関わりをする。

6.授業改善と特別支援教育
子どもができないのは、「本人の努力不足」だけではない。「何をどのようにすればよいか」を伝えることが改善につながる。

子どもへの関与の仕方も、より関わりが深い方法がある。「言語指示」→「見せる」→「お手本を示す」→「手を添える」

特別支援教育は、特別な支援が必要な子どものため、ではなく、教師自身の「関わりへの省察」を促すものである。

そして、もっとも大切なのは、「自尊感情」を子どもたちに持たせること。

それには次のことが必要。
・欠点を長所ととらえる発想
・他者がハンディキャップと考えることを自らはねのける気持ち
・他者よりも苦手なところも逆に優れているところもある。それが自分だと思える気持ち

子どもへの理解をもっと豊かにし、教育活動をさらに豊かにするために、日々の関わりに役立てていただくのが願いです。
(文責:五藤博義)

 

■ グッズレポート:携帯筆談器 COBO(コボ)
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声だけで理解するのがにがてな子に、いつでもどこでもサッと取り出して、書いて説明できる筆談器の紹介です。紹介してくれたのは「にかとま」の名前で、学びの支援に関する様々な情報を発信するブログを展開する小学校の先生です。

製作元の動画がありますので、こちらをご覧いただけば一目瞭然です。
★動画はこちら>>

何度でも書ける、太字と細字が書ける、簡単に消せる、さわっても汚れない、付属のペンはいろいろな持ち方ができる、ストラップで携帯できる、等々。

様々な支援グッズを開発・販売するおめめどうさんも取り扱っておられることからも、その有用性が想像できますね。

★ヴァラエティカフェ・グッズレビューはこちら>>
レヴュアー: にかとま

 

■ イベント:初夏の注目セミナー
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新年度になって1か月というタイミングのせいなのか、講演等の充実した企画が目白押しです。その中でも編者自身も参加したいと思う3つを選んでみました。

1.インクルーシブな教育のために~通常学級におけるナチュラルサポート
メルマガ発刊の翌日なのですが、特に教育関係者にお勧めの内容なので紹介させていただきます。講師は、ディスレクシア支援のNPO EDGE代表の藤堂栄子先生と、前述「ズバッと解決ファイル」の中心人物、阿部利彦先生です。

文部科学省の調査で、通常学級に6.5%いると教師が回答した、支援が必要な子どもたちに通常学級で具体的にどのように支援すべきかという疑問に応えていただけると思います。

5月18日午前10時~午後1時 東京都葛飾区 1000円
★詳細はこちら>>

2.秩父学園 自閉症子育て支援セミナー
日本におけるABA(応用行動分析学)の第一人者、三田地真実・星槎大学教授が「子どもの行動の本当の意味を知り気持ちを理解するため、ABAの基礎」を解説してくださいます。

自閉症と書かれてはいますが、ABAを知っておくことはすべての発達障害と、様々な困り感をもつ多くの子どもたちに接する際に、理解と対応の手立てとして、役に立つと思います。

6月1日午前8時50分~午後4時10分 埼玉県所沢市 1000円
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3.学童期・思春期の学校でのつまずきを防ぐための視知覚認知からのアプローチセミナー
ビジョントレーニングの第一人者、北出勝也先生のセミナーです。黒板書き写しや行の読み飛ばし、勝手読みなど、「読み」に原因のある様々な困難への対処法を解説してくださいます。また、お子さんの通う小学校に、どのように支援を求めるかといった具体的な手立てについても解説いただけるとのことです。

7月13日午前11時15分~午後4時40分 大阪市 2500円
★詳細はこちら>>

 

■ あとがき
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編者も、5月26日足利市、6月8日鳥取市で講演をします。前項で紹介したセミナーでの最新の情報も含め、お話しさせていただく予定です。お近くの方は会場に足を運んで、声をかけていただければ幸いです。

足利市 ちょっと気になる子たち(発達障害児)をささえるオヤジの集い
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鳥取市 鳥取環境大学サイエンスカフェ2013
★詳細はこちら>>

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