「映画:ケアを紡いで」

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2023.05.12

「映画:ケアを紡いで」

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■  新連載:サービスとアプリ-目標と由来
■□ コラム:映画:ケアを紡いで
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■ 新連載:サービスとアプリ-目標と由来
                   第1回 高次脳機能バランサー
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本メルマガの発行元、レデックス株式会社の代表として、2008年に高次脳機能バランサーを製品化してから様々なサービスとアプリを上梓してきました。創刊300号を迎えたタイミングでもあり、それらをどのような目的で開発したのか、その製品はどのような由来で実現しえたのかを、紹介させていただきたいと思います。

0.コア
当社製品にはベースとなる材料があります。それは、高濱正伸氏が代表を務める花まる学習会が長年、実際に子供たちに使ってもらいながら作り上げてきた「なぞぺー」というパズル群です。

ある人の紹介で高濱氏を紹介され、花まる学習会※1の教室を見学した時のことは鮮明に覚えています。10人に一人くらいで配置された指導者が、紙に書かれたパズルや木製のパズルに取り組むように子供たちに伝えると、子供たちは猛スピードでそれを解いていきます。できた子は手をあげて自分がより早くできたことをアピールします。学校や自習の学習とはまったく違う、スピード感と子供たちの充実した笑顔に感銘を受けて自宅に戻りました。そして、それらのパズルを詳しく調べるにつれ、子供たちの能力をいろいろな角度から刺激し、伸ばしていくであろう可能性を感じて、高濱氏にそのデジタル化を任せてもらうようにお願いしました。それでできたのが、デジなぞ第1集、第2集とはじめてなぞぺーという製品です。

※1 花まる学習会 

1.転機
それらの製品は、レデックスの力不足からそれほど多くの数を世に出すことができませんでした。その時に、デジなぞを見て声をかけていただいたのが、橋本圭司医師です。

橋本氏は米国で学んだノウハウを基に、東京慈恵会医科大学で脳外傷者の集団リハ・プログラム「オレンジクラブ」※2の活動で注目を集めていました。オレンジクラブは、それぞれ異なる認知機能障害を抱えたメンバーが一緒に活動することで、自分に欠けた認知機能があることに気づけることがポイントです。そのことで、自己認識を新たにし、自分に不足した機能を高めるように努力することからリハビリの効果をあげていきます。

その際のリハビリのツールとして、注意障害や記憶障害、遂行機能障害など、それぞれの認知機能を使ってリハビリができるように、医師や看護師が手作りでパズルや新聞の切り抜きを用意していました。橋本氏は、それぞれの認知機能別にリハができるようなパズル等をパソコンアプリで実現してほしいと当社に依頼してくれました。

そこで思いついたのが、デジなぞをベースにしたデジタルパズルによるトレーニングツールの実現です。

※2 東京慈恵会医科大学のオレンジクラブを見学 

2.高次脳機能バランサー
脳の損傷部位により、7種類の認知機能ごとのリハビリを実現できるように開発したのが、高次脳機能バランサーです。具体的には、以下の29種類のパズル(タスク)で構成しました。

〇7種類の認知機能とタスク

・見当識:自分のおかれている時間や場所を認識する能力
 タスク 見当識チェック
・抑制力:エネルギーや感情、行動をコントロールする機能
 タスク ストップウォッチなど、5種類
・注意力:覚醒し、注意を向け、集中しそれを維持する機能
 タスク 視覚探索など、5種類
・情報獲得力:五感から情報を受け取り、それを理解し反応する機能
 タスク 記号算など、5種類
・記憶力:新しいことを記銘し、保持し、必要な時に引き出す機能
 タスク フラッシュライトなど、5種類
・遂行機能:物事を計画し、それを実際に行動に移す機能
 タスク 条件迷路など、4種類
・空間認知力:受け取った視空間情報を客観的に処理し、冷静に判断する能力
 タスク ジャストフィットなど、4種類

使い方としては、アプリを立ち上げると連続的に3種類のタスクが出題され、まずそれを行います。それ以降は、8種類のおすすめセットプログラムの中から選んだり、認知機能ごとのカテゴリーを選択して取り組みたいタスクを選んだりして、自分のペースで取り組みます。

3.評価のための指数の設定と記録
タスクごとに異なる得点を認知機能間で比較できるように、数十名の利用者の取り組みデータを使って、平均点と標準偏差を出しました。それを用い、平均を100、標準偏差を15に設定して、各タスクの結果を指数として出力するようにしています。それにより、利用者の認知機能のバランスが把握できるようになり、環境調整などが行えるようになっています。

さらに、それらの指数をデータとして取り出せる機能を設けたため、統計的な処理が可能になっています。そのことで、利用者ごとの改善度や、別の取り組みをしている施設を比較することなど、リハビリに関する調査研究のためのツールとして使われることも年々、増えてきています。

4.高次脳機能障害のリハ以外への活用の広がり
交通事故等による脳の損傷は状況によってあらゆる部位に起きる可能性があり、そこで発生する機能低下も、さまざまな認知機能について起こります。それらのリハを網羅する目的で開発された高次脳機能バランサーは、認知機能障害の一種である、発達障害や知的障害のリハ、つまり機能改善にも利用が可能ということになります。ただし、ユーザーインタフェイス等によって実際に使えるかどうかという問題は存在しますが、、、

多くの認知機能のリハに活用できるということから、発売以来、幅広いフィールドで使われるようになってきています。特に、利用人数を増やすなど、施設での利用に必要な機能を追加した高次脳機能バランサーProは、病院やリハビリテーション施設にとどまらず、特別支援学校や就労移行支援施設など様々な施設で利用されるようになってきています。注目すべきケースは刑務所での採用です。認知機能の改善が適応機能の向上につながり、そのことが服役者の社会復帰を後押しすると考えていただいているようで、最近半年間だけで複数の刑務所で購入していただいたことを読者の皆様にも紹介させていただきます。

5.さらなる広がりを目指して
高次脳機能バランサーがきっかけとなり、認知機能に関する様々な困りに対処するサービスやアプリ※3の開発を、レデックスの中心事業として行うことにしました。それ以来、脳バランサーキッズやライフスキル、感覚・動作アセスメントといった数多くのサービスやアプリを開発してきましたが、各製品はそれぞれ新たな出会いがあって初めて実現したという経緯があります。今回の連載では、どのような出会いが、どのような目的を果たすための製品群の実現に寄与してきたかを紹介していきたいと思います。

※3 サービスとアプリ一覧
 

◆五藤博義
 


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■ コラム:本や映画の当事者たち(7)
                  映画:ケアを紡いで
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今回7回目となる不定期での連載です。

タイトルからもわかるように、いわゆる障害や病気などの当事者といわれる人たちが描かれている本や映画、DVDなどを紹介します。

今回の映画『ケアを紡いで』は、若くしてがんになった看護師が病気とともに生きていく姿を描いたもの。がんになっても、夢をあきらめず、病気を受け入れて愛する人とともにできるだけ自然体に生きていこうとします。看護師として患者のケアを行っていた主人公が、ケアされる側に回り、周囲の人の手に助けられながら、生きていきます。

〇がんとともに生きる看護師の日々を描いたドキュメンタリー映画
今は不治の病とはいえないがんですが、若い世代では進行も早く、いのちに向き合い精いっぱい生きるAYA世代※1のがん患者たちがいます。

その多くは医療費制度と介護保険の谷間で経済的な支えとなる制度がほぼない現状です。この映画は、27歳でステージ4の舌がんと診断を受けてからの看護師の日々の記録です。

監督は『ただいま それぞれの居場所』『夜間もやってる保育園』など、現代社会のさまざまなケアの営みと制度のありようを見つめる大宮浩一。撮影を手がけるのは『桜の樹の下』の田中圭。そして、この映画を企画したのは、医療の最前線で看護師として働いていたゆずなさん自身です。看護師として患者を支える側から支えられる立場になり、悩みや葛藤する気持ちをありのままに伝えていきたいという彼女の思いからこの映画は生まれました。

ゆずなさんは、映画の中で日々の気づきを言葉にして伝えています。その珠玉の言葉の一つ一つが心に刻まれます。「生きにくさを感じる人は他にもたくさんいますよね」、「ネガティブな自分を抑圧せず、素直に受け入れた」、「"今、自分は辛いんだな"と否定も肯定もせずただ受け入れる」等々。

がんが進行し、思うようにやりたいことができないなかで、ありのままの自分、弱い自分を受け入れていく気持ちの変化が描かれています。
病気を知ったからこそずっとそばにいることの大切さを思って結婚することにしたという夫の翔太さん。やりたいことリストをつくり、夫や先輩看護師、NPO法人「地域で共に生きるナノ」※2の支援者や仲間たちのサポートを受けながら1つひとつ目的を達成し、淡々と毎日を紡いでいきます。

「人は1人では生きていけない、人とつながり人に頼ることの大切さを知ってほしい」という主人公ゆずなさんの思いが映像からあふれたこの映画。「人の幸福ってなんだろう」と考えさせられ、日々の生活の大切さを教えてくれます。

人間のあるがままの姿を自然体で描いていて、観た後に、肩の荷を下ろして軽くなったように感じました。知恩※3という言葉を初めて知りました。とてもいい言葉ですね。
病気を受け入れて、ありのままの自分、弱い自分を受け入れていくゆずなさんの強さに心を打たれました。周囲の人に見守られ、見守っていたゆずなさんは、周囲の人に勇気を与えたのではないでしょうか。

※1【AYA世代】adolescent & young adult:15歳から39歳までの世代を指す。

※2 ゆずなさんの先輩看護師が支援者探しをする中でつながったNPO法人。障害の種類や年齢・性別の区別なく、安心して集える居場所づくりをしている。

※3 日常の中で様々な物事から恩恵をいただき生きていることを意識して感謝すること。

(c) 大宮映像製作所 全国順次、公開中
■出演:鈴木ゆずな、鈴木翔太、西川彩花、沼里春花、野村将和、谷口眞知子、「地域で共に生きるナノ」の皆さん
■監督:大宮浩一 ■企画:鈴木ゆずな ■制作:片野仁志、大宮浩一
■撮影:田中圭 ■編集:遠山慎二 ■整音:石垣哲 
■エンディング曲:「HOME」古見健二 ■配給:東風 ■製作:大宮映像製作所

2022年 89分 日本 ドキュメンタリー

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ライター。
編集制作会社にて、書籍や雑誌の制作に携わり、以降フリーランスの編集・ライターとして活動。障害全般、教育福祉分野にかかわる執筆や編集を行う。障害にかかわる本の書評や映画評なども書いている。
主な編著書に、『ADHD、アスペルガー症候群、LDかな?と思ったら…』、『ADHD・アスペ系ママ へんちゃんのポジティブライフ』、『専門キャリアカウンセラーが教える これからの発達障害者「雇用」』、『自閉症スペクトラムの子を育てる家族を理解する 母親・父親・きょうだいの声からわかること』『発達障害のおはなしシリーズ』、『10代からのSDGs-いま、わたしたちにできること』などがある


■□ あとがき ■□--------------------------
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