さんすう学習の基礎は概念の習得から

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2022.10.07

さんすう学習の基礎は概念の習得から

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■   まえがき
■□  新連載:さんすう学習の基礎は概念の習得から
■□■ 連載:認知特性を知るためのコンテンツ
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■□ まえがき ■□--------------------------
当社サービスを導入している放課後等デイサービスの方から、施設での子どもの学習支援に使える教材を用意してほしい、という相談を受けることが時々ありました。札幌の施設を訪問した折に、脳バランサーキッズと組み合わせて使っている、と紹介を受けたのが「エジソンクラブ」※という教材です。

エジソンクラブ 

編者はもともと教材の開発に携わった経験を持ち、「問題を解く」ことよりも、その問題に必要な概念を習得することが必要だという信念を持っています。エジソンボックスを一目見て、これは私の考える教材の在り方と同じ考えに基づいて作られたものだと感じました。

そして、札幌の施設の方からエジソンボックスの新村一臣社長を紹介され、放課後等デイサービスに学習機能を付加する形の教材群として「ほうかごエジソンボックス」※という教材の商品化で合意することができました。

ほうかごエジソンボックス 

本連載は、その教材の開発経緯と理念について語っていただき、「教えるための教材」「よい点をとるための教材」とは異なる「子ども自身が学べる教材」のあり方について、読者の皆様に知っていただければと思います。


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■ 新連載:さんすう学習の基礎は概念の習得から
             第1回 人気の教材は一人の学力不振児からうまれた
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エジソンクラブの新村と申します。

幼児・低学年向けの基礎学習教材の開発、販売に50年以上携わっております。
その経験の中で、皆様のお役に立てる情報があるのではないかと、本メルマガ主宰者からご指名いただきました。
50年以上といっても、家業が教育事業であったため、未成年の手伝い期間も含めての期間です。

さて、弊社の事業は幼児・低学年向けの基礎学習教材の開発販売ですが、弊社の教材開発でこだわってきたこと、その中で皆様と共有したい内容について触れてまいります。

教材開発で弊社が実践してきた内容を知っていただくことで、教材導入もしくは教材制作の参考にしていただければと思います。

〇教材作成のきっかけ
最初教材制作に取り組んだきっかけは、一人の小学生の存在です。
45年前、小学1年生のお子さまは、現在なら特別支援教室で指導を受けるタイプのお子さんでした。当時の小学校の担任の先生から、特別な指導を受けないと将来が心配ですよ!と言われたのです。
LDの要素が強いお子様でした。そのようなタイプの子は当時でも、クラスに2~3名いたような記憶があります。

教員の資格を持っていた私の母が個別指導の依頼を受け、週に3回指導を行いました。家の居間での個別指導です。

3カ月もすると、クラスで学力的に問題のあった子が、最下位ではなくなりました。

さらに同じ学校の担任のアドバイスを受けて、その子の次に問題のあった子が勉強の指導を受けに来るようになり、その子が伸びるとまた次に問題のある子が来る、という流れがいつのまにかできたのです。4年もすると最終的に500人ぐらいの地元の区立小学校から半数以上が通ってくる、地域では評判の教室になっていました。

ひとりの学力に問題のある子がきっかけで、学習教室がスタートしたのです。

その教室での指導を支えたのが、進級式の教材(のちの「基礎学習れんしゅうちょう」シリーズ)です。完全に手作りなのですが、子どもがつまずくところを細かく多段階に分け、自力で問題解決できるようにした教材です。

当時は、書店を探しても、学力不振児向けの教材などあるはずもなく、手書きで教材を作成していくことになります。小学1年生から4年生程度まで3,000種類近くのプリントができていきました。
ガリ版方式で原稿を印刷するのを手伝っていたのでしっかり覚えています。

〇教材の方針と大切にしていること
その時の教材の基本方針は、「子どもの手が止まらない教材」、「楽しく取り組める教材」でした。

特徴は、さんすう教材でありながら、計算学習の前に必要な「かずの概念」の習得に力をいれている点です。

さんすう学習というと、数字のよみ、かき、順序数(数唱)、そしてたす1、たす2、たす3の計算に入っていく、という学習方法があります。今でもそのような教室が全国に多数あります。でも、その学習方式では問題があると考えていました。

さんすう学習では、計算学習に入る前に大切な基礎となる準備学習があるからです。

それは「さんすうのことば」の学習です。かずの概念の習得ともいえます。

さんすうで必要となる基本的なことばを充分理解できていないまま学習が進んでいくと困ることになります。実際、文章題になったときに手が止まる例が多いのです。

「のこりはいくつ」「あといくつで〇になりますか」「最後に足りなくなるのは」・・・。大人になると誰でも知っているような表現でも低学年の時にはよくわからないことが多く、「この問題って、足すの引くの掛けるの?」という質問がこどもから寄せられます。

大人は長期にわたる日常生活のなかで自然に身につけてきていることばでも、幼児・低学年の児童にとってはわからないことだらけなのです。

この「さんすうことば」に対しての理解度も個人差が激しく、会話の多い家庭の子どもは生活の中で自然に身につけていきますが、会話の少ない家庭では身についていない例が多いというのが実感です。

「おおきい、ちいさい、おおい、すくない、ふとい、ほそい・・・」にはじまるさんすうのことば(用語)は1年生だけでも200以上あります(1951年度学習指導要領小学校算数から)。それだけの種類を一つひとつ丁寧に身につけていくことは難しいのが現実です。

ことばの正しい理解なしに、さんすうを記号計算をマスターすることだけに注力して学習することは文章題のみならず応用問題で思考が止まってしまうことにつながります。
また、たしざん、ひきざん、かけざん、わりざん、それぞれに概念として身につけるべき大切なことが多数あります。

作成してきた進級式の教材は、ことば(概念)を意識した内容になっています。また、段階が細かく分かれ、子どもの理解に合わせて学習を進めていけるのが最大のメリットです。

実際教材の中にどのように組み込まれているかについて、次回お伝えしたいと思います。

◆新村一臣(にいむらかずおみ)
株式会社エジソンクラブ 代表取締役
株式会社新村教育研究所 代表取締役


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■ 連載:認知特性を考える
             第3回 認知特性を知るためのコンテンツ
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こんにちは。本田式認知特性研究所です。

前々回のメルマガでご紹介した通り、当研究所は認知特性を中心とした「理解し、糧とし、表現する」ための機能を社会の様々な領域で活用いただくための活動を行うべく今年6月に設立された組織です。

さて今回の記事では、そんな私たちの情報発信のハブであるWebサイトのコンテンツをご紹介したいと思います。記事を読み興味を持たれたコンテンツがありましたら、ぜひアクセスしてみてください。

■SNS
LINE公式アカウントと、Twitterで情報発信を行っています。一部の認知特性テストコンテンツは、当研究所のLINE公式アカウントに友達登録している方にお使いいただけるようになっています。

Twitterでは、認知特性・認知機能や気質と学びや日常生活とを結びつけるようなつぶやきを不定期で発信しています。(Twitterの中の人はいまこの原稿をまさに書いている本人です。ぜひフォローをお願いいたします!)

LINE公式アカウント
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■認知特性テスト
現在最新の認知特性テスト「コグテン」を開発中ですが、公開まで今少し時間がかかります。そこで、既刊の書籍に収録されている認知特性テストと同様の「本田40式認知特性テスト」をオンラインで無料で行えるように仕立てました。LINE公式アカウントに友達登録していただいた上でご利用ください。

また、LINE公式アカウント上では、より簡易に数問の質問だけで認知特性の傾向がわかる「かんたん認知特性チェック」も行うことができます。

その他、Webサイトの「サービス」のコーナー内では、Eテレ「バリューの真実」で取り上げられた10問診断テストもご紹介しています。こちらも簡易に認知特性の傾向がわかるテストになっています。

■動画
当研究所のメンバーが認知特性について様々な角度からざっくばらんにトークした動画をYoutubeで配信しています。Webサイトからもこれらの動画にアクセスすることができますので、ここからは各動画についてその内容を簡単にご紹介いたします。

トークしているのはそれぞれ認知特性の偏りの強いメンバーなので、話している中でも特性ごとにものごとの捉え方や考え方に違いがあり、各メンバーもお互いのその違いに改めて気づきや発見があったようです。

そもそも「認知特性」とは何なのか。提唱者である本田真美が認知特性についてゼロから丁寧に説明します。

当研究所では認知特性を大きく「視覚」「聴覚」「言語」の3つに分け、それぞれをさらに2タイプずつ、合計6タイプに分類しており、その「カメラ」「3D」「辞書」「ファンタジー」「ラジオ」「サウンド」の各タイプについて具体的に解説しました。また認知特性テストによってあらわされた特性の凹凸をどう読み解けばよいのかについても説明します。

■動画:「認知特性に気づいたきっかけ」
「認知特性」の考え方を提唱した当研究所の本田真美が、そもそも認知特性に気づいたきっかけについて語ります。

小児科医として子どもたちと接する際に、個々の好みや得意分野が異なっていることを日々実感している中で、結婚当初から夫(研究所メンバー本田晶大:ほんだまさひろ)とのものの見方や考え方が自分と極端に異なっていることに気づいたことから、その違いを意識するようになったそうです。初対面で相手の名前や名刺の字面は覚えているが顔かたちを覚えられない本田と、一方で顔は覚えているのに名前が覚えられない夫。そもそも認識や記憶の方法が違うのではないかと気づきはじめます。

■動画:「学習と認知特性
学びと密接に関わっている認知特性。学習スタイルや指導方法と認知特性との関係を探ります。

多くの子どもと同時に接する教師に対して、子どもにとっては教師は唯一の場合が多いです。その教師と認知特性が合わないことによって取りこぼされている子どもがかなりいるのではと感じている研究所メンバーがいます。そもそも教師が認知特性を知らずその違い自体を意識することが無いという現状の話をきっかけに、子どもの多様な認知特性に応じて指導法や学習法、参考書を選択することの有用性と方法を語ります。

比較的少ないと言われている聴覚優位者の中でも、極端に聴覚に特化したメンバー粂原圭太郎(くめはらけいじろう)の体験談をメインに、聴覚優位者から見える世界を紹介します。

執筆した参考書で提案する勉強法や自身が主宰する個別オンライン指導塾で、指導した勉強方法が合う人と合わない人がおり、その違いに悩んでいる中で「認知特性」という考え方に出会ったという粂原。競技かるたのチャンピオンという経歴も持つ彼が、様々な場面での聴覚優位者ならではのエピソードやものの見方を披露します。

聴覚特化型だった粂原に対して、次は極端に視覚特化したメンバー本田晶大の体験談を紹介します。

記憶の中で画像と別の画像をリンクして覚えているエピソードや、自分の中の最も古い記憶の映像の話、道迷いの話などをきっかけに、その他のメンバーとの認知の違いについて語り合いました。

視覚優位者と言語優位者が作るPowerPointの内容が全く異なるというエピソードを皮切りに、特性の「違い」に焦点を当てたトークを展開します。

社会生活や日常生活、子育てなど、他者とのコミュニケーションの中で自分の認知特性を知ることと、人によるその偏りや違いを認識して受け入れることのメリットを解説しました。

■動画:「認知特性と生きやすさ」
自分の認知特性ゆえに生きにくいと感じてしまうことであっても、特性を知ることでそれを回避したり別の方法で解決したりすることができます。認知特性は環境によって変化するのか? 私たちを取り巻く時代や環境と認知特性との関係について、多角的に話し合いました。

学びや生活における行動や特性を測る尺度の中でも「認知特性」とは別の「基本的欲求」という尺度について、メンバーの馬場悠輔(ばばゆうすけ)が解説します。

「基本的欲求」は、アメリカの心理学者グラッサーが提唱する選択理論の中のひとつの概念で、「生存」「愛・所属」「力」「自由」「楽しみ」の5つの欲求とその強弱が、性格の違いのベースとなっているという考え方です。それぞれの欲求の強弱や他人との欲求の違いによるコミュニケーション上の問題など、興味深い話をわかりやすく説明しています。

当研究所では、認知特性や認知機能以外にこの基本的欲求にも焦点をあてたコンテンツを今後発信していきたいと考えています。

いかがでしたでしょうか。
今後も当研究所では引き続き認知特性や認知機能、気質力等の話題を随時発信してまいります。もし興味を持たれた内容がありましたら、ぜひ各URLにアクセスしてご覧いただけましたら幸いです。




■□ あとがき ■□--------------------------
次回メルマガは、10月21日(金)の刊行予定です。

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