外国人の子どもの学習を支援する多言語版算数・数学動画コンテンツ

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2021.08.27

外国人の子どもの学習を支援する多言語版算数・数学動画コンテンツ

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■   連載:外国人の子どもの学習を支援する多言語版算数・数学動画コンテンツ
■□  連載:凸凹でも補い合って働ける。ココトモファームの組織づくり
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 ■ シリーズ:子どもゆめ基金のデジタル教材
          連載:「様々な困りごとに対応した算数・数学動画コンテンツの制作」
                   第2回 外国人の子どもの学習を支援する多言語版算数・数学動画コンテンツ
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1.はじめに
文部科学省の調査によると、2018年度の外国籍の子どもは93,133名(2年前調査比+16%)であり、そのうち日本語指導が必要な外国籍の子どもは40,485名(2年前調査比+18%)です。外国籍の子どもの約43%が日本語指導を必要としています。一方、日本語指導が必要な日本国籍の子どもは10,371名(2年前調査比+8%)です。外国籍と日本語籍の日本語指導が必要な子どもの合計数は50,856名となり、第1回で取り上げた不登校の小学生の人数に近づいてきています。

日本語指導を必要とする子どもの母語としては、ブラジルポルトガル語、中国語、フィリピノ語、スペイン語、ベトナム語の順となっています。各言語を話せる専門スタッフがいないと、教科の学習はおろか、日常の子どもとのコミュニケーションや、保護者との連絡等においても様々な問題が生じてしまいます。外国人が長年にわたって数多く在住してきた地域では、それなりのサポート体制が構築されているのですが、近年外国人が急増している地域や、数家族のみが在住するといった散住地域では、とりわけ、支援体制が不十分な状態です。

2.言語の壁とカリキュラムの壁
日本語指導が必要な外国籍と日本国籍の子どもには、教科の学習において2つの壁があります。一つは、言語の壁です。日常生活の言葉以上に、算数・数学用語を日本語で理解することは容易ではありません。もう一つはカリキュラム(何年生で何を学ぶかというリスト)の壁です。実は、国によって算数・数学の内容を扱う学年が違っています。中学2年生で日本に来たとしても、日本の中学1年生で学習する内容を全て学習しているとは限りません。したがって、数学の内容のレベルが一気にジャンプした状態になってしまい、理解できなくなってしまうのです。併せて、わり算の筆算の方法は、国によって異なる場合がありますので、初めて出会う方法に戸惑ってしまうこともあるのです。

3.多言語版算数・数学動画制作のコンセプト
日本語版算数・数学動画コンテンツを、ブラジルポルトガル語、中国語、ベトナム語、韓国語、英語にそれぞれ翻訳することで、日本語指導が必要な子どもの算数・数学支援を行っています。その中核を担ってくれているのが、留学生です。京都教育大学数学領域専攻の学生が制作した算数・数学動画コンテンツを、京都教育大学をはじめとして、大阪大学、立命館大学、天理大学、中部大学などに在籍する留学生らが翻訳し、多言語対応版算数・数学動画コンテンツを制作しています。

日本語版と多言語版の画面構成を同一にすることで、最初に母語(多言語版)で算数・数学を学び、しっかりと内容を理解できた段階で、日本語版を学習することで日本語での算数・数学の学習へとつなげていきます。また、教員も日本語版を視聴することで、母語(多言語版)での算数・数学動画コンテンツの内容を理解することができます。スモールステップで全ての学年の内容を揃えているため、国ごとのカリキュラムの違いや、個々人の学習状況にも対応することが可能です。

※日本語版算数動画コンテンツの画面

※ブラジルポルトガル語版算数動画コンテンツの画面

4.多言語版算数・数学動画コンテンツの実際
これまで制作した多言語版算数・数学動画コンテンツは、小学生版が計620本(ポ、中、ベ、韓、英)、中学生版が616本(ポ、中、ベ、韓)、高校生版が263本(ポ、中、韓、英)です。高校生版は、現在、制作途中であり、2023年3月に全ての学年が完成予定です。これら全ての動画コンテンツは、専用ホームページとYouTubeサイトで無償公開しています。
 
※高校生版数学動画コンテンツページ 

今後も、外国人の人口は増加することが予想されることから、多言語化をさらに推進し、日本に在住する全ての子どもたちが、安心して学習することのできる環境を整えていきます。

(出典)
文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成30年度)の結果について」(令和元年9月27日)
国立青少年教育振興機構 子どもゆめ基金「外国人の子どもたちのための多言語対応版学習コンテンツの開発」(京都教育大学外国人の子どもの教育を考える会、代表:黒田恭史)
日本学術振興会 科学研究費補助金「外国人高校生の中退率7.4倍を改善する多言語対応版数学動画コンテンツの開発と普及」(20K20824、代表:黒田恭史)

◆黒田 恭史(Yasufumi Kuroda)
大阪大学大学院博士後期課程修了 博士(人間科学)
京都教育大学教育学部数学科教授
一般社団法人 数学教育学会 学会誌編集委員長
映画『ブタがいた教室』(日活株式会社)原作者



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 ■ 連載:発達障害でIT社長の僕
                     第2回 凸凹でも補い合って働ける。ココトモファームの組織づくり(最終回)
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前回は、特性を無理に消すのではなく、いいかたちに伸ばせれば光が見えてくることをお伝えしました。

その後、僕はIT会社を立ち上げ、児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援向けの施設運営システム HUG(ハグ)というサービスの提供を開始しました。

※HUG

全国の障害福祉施設様の本当のお役に立てるよう、僕たちも放課後等デイサービスや就労移行支援事業所を始め、そこで得られた知見を HUG に盛り込んでいきました。その過程で痛切に感じたのは、社会での居場所づくりの大切さです。

今回は、凸凹でも補い合って働けることをコンセプトにして新たに立ち上げた「ココトモファーム」についてご紹介したいと思います。

※ココトモファーム 

ココトモファームは愛知県犬山市にある農業法人です。
8.6ヘクタール(約2万6千坪)の田んぼでお米作りをしています。

当初は働き手が不足している「農業」と、働く場所に課題のある「福祉」をつなげる、農福連携を行うことを目標にしました。
でもすぐに"農業だけでは経済的な自立ができない"という大きな壁に直面しました。
お米を作って販売するだけでは、働き手を雇用するだけの収益が無かったのです。

そこで僕たちが考えたのが、農業と福祉の間に「商業」と「工業」を入れた農商工福の連携です。それにより、経済的な自立ができるのではないかということでした。
具体的には、1次産業の農業でお米を作り、2次産業の工業でお米を粉にしてバウムクーヘンを製造し、3次産業の商業で店舗販売をするという、1次×2次×3次=6次産業というやり方で収益性を高めます。
その中で障害がある人もない人も自分の得意な部分を活かせる場所を見つけ、互いに補い合いながら働くことを目標にしています。

ココトモファームにはいろんなスタッフが働いています。

販売部門のAさんは、心因性失声症のため声を出すことができません。
それでもココトモファームの考え方に共感してくれて入社し、筆談や手話で接客をしながら素敵な笑顔で周囲を明るくしてくれています。
そして、いつか地域の学校やインターネットでココトモファームの活動を広めていきたいという夢を持っています。

製造部門のBさんは、小学生の長男に発達障害と軽度の知的障害があり「この子が社会に出たらどうなるんだろう」と不安を感じていました。
ココトモファームで働く今は、周囲を支えながら「将来は長男も一緒に働きたい。ゆっくりでも長男の成長をそばで感じて、一緒に喜び合いたい。ここならできると思う」という夢を持っています。

農業部門のCさんは、軽度の知的障害があります。
自分で状況判断をすることは苦手ですが、単純作業をずっとやり続けることは得意です。とても真面目に働いているだけでなく、細かい変化にもよく気づき、なくてはならない存在です。

自分の居場所というのは、自分が誰かのために役に立っていると思えることで作られていくものではないかと、僕は考えています。
だから自分の存在意義が感じられる組織や職場であることが、一番大切なのではと思っています。

そして凸凹が補い合って作った米粉のバウムクーヘンで、社会を支える"幸せの輪"を 広げることができれば、と願っています。

◆齋藤秀一(株式会社ネットアーツ代表取締役、株式会社ココトモファーム代表取締役)
「発達障害でIT社長の僕」(幻冬舎)
  自家製米粉100%グルテンフリーのバウムクーヘン
 


■□ あとがき ■□--------------------------
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