「キャッシュフロー表」ってご存知ですか?

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2018.03.09

「キャッシュフロー表」ってご存知ですか?

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■ 連載:性とお金と親亡きあと:「キャッシュフロー表」ってご存知ですか?
■ 連載:成人ディスレクシアの独り言:ICTを活用して学ぶということ
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─■ 連載:性とお金と親亡きあと -タブー視されがちな領域の支援
第5回 ファイナンシャルプランナーがお勧めします。「キャッシュフロー表」ってご存知ですか?
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福祉の現場で33年も支援をしていると、支援させて頂いた利用者さんやそのご家族が亡くなられるという辛い経験をいたします。何年も前の話ですが、「うちのお母ちゃんが昨日死んでしもた・・」と、一人息子である彼が、母が亡くなった日に電話で私に知らせてくれました。お母さんが病気がちであったことや、お葬式の準備で親戚があわただしくしている様子を伝えてくれました。生前お母さんは、「私が死んだあと一人残されるこの子のことが心配です。」と言われていたことを思い出します。でも、ご安心ください。彼はその後グループホームに入られて、元気に毎日を過ごされています。

〇親亡きあとのことを考える

親御さんは常に、「親亡きあと子どもの生活がどうなるのか」ということを心配されています。支援機関とさえ繋がっていれば、その後の暮らしは安心に暮らしていることを知っていただきたいのですが、なかなかそれだけでは安心できる材料にはなりません。それは、親(自分自身)の財産の行方や、それが障がいのある子のために有効に使われるのかということが明確にならないので、漠然とした不安が頭をよぎるのです。

私自身、サービス管理責任者として現場で支援計画を立ててきた経験と、ファイナンシャルプランナーの資格を取得して、実際親御さんの相談に乗らせていただいたから気が付いたことですが、親亡きあとに向けて、親と子どもでは支援のあり方は全く違います。福祉でいう支援は、目の前にいる当事者さんを中心に支援計画を立てます。就労支援では働くことを中心に、生活支援では豊かな生活を送るために支援計画を立てています。ですが、その支援計画の中には、親の財産や相続を意識して就労のあり方や暮らしのプランを立てることはありません。あくまで障がいのあるご本人を中心に考えた支援なのです。なので、親御さん自身が福祉の支援対象でない限り、親は自分たちの暮らしをどうしていくのか自分たちで考える必要があるのです。では、親の資産のことを誰に相談して誰に支援を受ければよいのでしょうか・・・考えてみましょう。

自営業をされている方の場合、税理士や弁護士、司法書士など顧問契約されている専門家が身近にいらっしゃると思います。まずは、その身近な専門家に相談されることをお勧めします。それでも「う~ん、子どものことまではちょっと」と思われる方は、ぜひ、ファイナンシャルプランナーにご相談していただきたいと思います。私が所属する“NPO法人ら・し・さ”や“ゆうちょ財団”では、障がいのある人のために活動されているファイナンシャルプランナーを登録しており、個人相談をお受けしています。きっと今まで抱えていた漠然とした不安がスッキリ解決すると思いますよ。

では、ファイナンシャルプランナーの役割についてお伝えします。ファイナンシャルプランナーはキャッシュフローを立てて家計における収支のバランスを見ながら、やりたいことがいつ実現するのかなど、包括的な視点を持ってアドバイスします。キャッシュフローとは簡単に言うと、1年間の収入から1年間の支出を引いた額がどのように変化していくのか知るための表なのです。お金のアドバイスをするときには欠かせない表です。私の場合、キャッシュフロー表は数字の羅列ですので、貯金の推移をグラフにしたものをアドバイスで使っています。

※キャッシュフロー表のグラフ例(詳細はこちら>>

※日本FP協会HPより家計のキャッシュフロー表がダウンロードできます(詳細はこちら>>


まずは、障がいのある子どものキャッシュフロー表を立てることで、お金が足りているか不足気味になるかが分かります。子どもが障害基礎年金を受給しているか、いないか、一般就労しているか、福祉就労か、親と同居か、一人暮らし、もしくはグループホームの生活かによってもキャッシュフローは変わります。例えば、私に相談された方の傾向ですが、障害基礎年金と給料で生活できている人は、働いている期間が長ければ長いほど、親は子どもに多額な資産を残さなくてもよいことが分かっています。もし、何らかの事情でお金が足りないことになるのなら、足りていない金額を計算してその金額を残すことを考えます。残し方は、生命保険や不動産の運用や売却の方法を探り、さまざまな福祉制度を活用することを考えます。そして、その方法が上手くいっているかどうか定期的に見直しをします。また、障がいのある子のことを考えるがゆえに、障がいのないきょうだいに配慮が欠けてしまうかもしれません。家族だけだと気付かなかったことをファイナンシャルプランナーがアドバイスしてくれることもあります。

親御さんの相談に乗らせていただくと、闇雲にお金を残している方がいらっしゃいます。親御さんによると、とりあえずお金を残しておくと安心という気持ちのあらわれだそうです。ですが、お金を使う目的が明確でなければ、また、使う支援がなければ貯めたお金は「使えないお金」になってしまうことがあるのも事実です。そうなんです。お金は「貯める」ことと同じように「使う」ことを計画することも大切なのです。
私は、今を豊かに生きるためにも、お金を使う実感を得て人生を送ってほしいと願っています。

鹿野佐代子 (福祉系ファイナンシャル・プランナー)
(プロフィール等はこちら>>

 

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──■連載:連載:成人ディスレクシアの独り言
第13回 ICTを活用して学ぶということ
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思いがけず叶った、大学進学という夢。もちろん、「入った」がゴールではありません。中卒の自分は、特修生という制度を利用して進学しました。まずはこの特修生の期間に一般教養を10単位以上とる必要があります。レポートを出して試験をうけて、10単位とれたら「この学校で学ぶ学力がある」と認めてもらえるんだそうです。で、そこからやっと正科生になれます。

大学側の理解により、ICTの使用は認められましたが、「ICTを使っていい」で、すべてが解決するわけではもちろんありません。課題を理解し、試験を受けて合格して初めて単位が出ます。専門科目に進めば、そこに製作も加わります。

「学生」という立場に対して38年、「提出物を出し、試験を受ける」という勉強スタイルについては40年以上のブランクがあります。まして、自分の記憶にある学校生活は、「みんなができることができない」に始まり「だからやらない」で終わった日々です。「聞いてれば分かって楽しかった」とはいっても、それを知識として蓄えて試験で評価を受けた経験は、ほぼないんです。「本当に大学生としてやっていけるんだろうか」という不安は、大きかったです。

テキストだけではイメージが持てない部分は、ネットで検索しては動画を探し、何本も繰り返してみました。キーワードや科目名を入れると、たくさんの授業動画や関連情報の動画がすぐに見つかります。本当にいい時代です。動画を視聴することでイメージが持て、自分なりの考えをまとめていくことができました。

テストはパソコンを使用するので、できるだけパソコンのキーボードに慣れておかなくてはと思うんですが、集中して考えをまとめていこうと思うと、自分はフリック入力が一番やりやすいということもわかりました。携帯にフリックで入力していくと、予測変換がどんどん出てきます。おかげで、考えているスピードと同じペースで書いていくことができます。「予測変換のおかげで、「えーと、今何を書こうとしているんだっけ」って行ったり来たりする負担がなくなって楽だなあ」と言うと、「読み書きの困難がない人は、それが手書きでもできるんだよ。考えているペースで文字が出てきて書ける感じ」と妻に言われました。「他の人は自分のように読み書きで苦労していない」ということはわかっているつもりでしたが、周りがみんなすらすらと書いていた謎が、やっと腑に落ちた気がします。なるほど、「文字を探さなくてもいい」というのは、こんなにスムーズなことなんだと、改めて思い、自分がICTを使うということは、本当にスタートラインに立つために必要なことなんだと実感しました。

レポートは、書いてから直すこともできるし、妻に見せて意見を聞くこともできるので、時間はかかるもののなんとかこなせました。しかし、試験はそうはいきません。パソコンの使用が認められたとはいうものの、試験会場で正しく答えられなければ評価は受けられません。

私が進んだ大学では、科目ごとに試験の問題は公開されています。8問くらいあって、そこから当日2問出るという形です。「なんだ、問題がわかっているなら楽勝じゃないか」と思われるかもしれませんが、自分にとっては、これもなかなか難しいものでした。

まず、公開されている問題全てについて、解答を自分なりに作ります。大学の試験ですから、一問一答ではなく、論述ばかりです。出てくる用語は日常的でないものも多く、正しく覚えて正しく書かなくてはいけません。ここまでは、レポートと同様な作業です。

次に、解答ができたら、読みあげ機能を使って、繰り返し繰り返し聞きます。仕事中もずっとイヤホンで聞き続けました。正直、何回か聞けば、内容は割と早く入ってくるんです。でも、細かい用語が正確な音では入ってきません。試験はパソコンで解答して提出なので、「正しく書く」ための出力も練習しなくてはいけませんでした。

すらすらしゃべれることでも、打とうと思うと、思考が中断して「えーっとなんだったっけ」となることは多いです。さらに、自分は音韻の困難が大きいタイプなので、「聞いた音」を話すことは簡単にできるのですが、それを打とうと思うと「どの文字を打てばいいのか」がわからなくなります。たとえば、「出張」と聞いて、「出張」と復唱することはできます。「出張」という漢字を、選ぶこともできます。でも、そもそも「しゅっちょう」という、文字が浮かんでこないんです。どう打てばあの字が出るのかわからない。そんな感じです。

きっと「読み上げさせてるんだから、そのまま書けばいいんじゃないの?」と思われるでしょうが、その「読み上げている音が文字にかわらない」んです。パソコンを打つためには「文字にする」必要があるんです。

ですから、自分にとって、出力の練習は不可欠でした。

まずは作った解答をipadで表示させ、それを見ながらパソコンにそのまま視写していきます。正しく読めない字は、正しく打ち込めませんから、その都度iPadの画面で「選択→辞書」と進み、読み方を調べます。「読み上げ」では、ダメなんです。辞書で調べると、音が見えます。調べた読み方をメモしていき、それを見ることでやっとその言葉を打ち込むことができるんです。

メモを見なくても、文章の中で打てるようになっていないと、試験は受けられません。試験前の一週間は、仕事の後、ほぼその練習に明け暮れていました。

「なんだ、ICTを使っても大変じゃないか」と思われるかもしれません。はい。大変です。でも、ディスレクシアでない方たちも、試験勉強は、きっと大変ですよね。ICTを使っていても、機械が勉強するのではなく、勉強をするのは「自分」です。内容を理解するために、正しく答えるために、繰り返し勉強していくからこそ、知識が身についていく、そこはきっと同じです。ただ、自分がそれをしようと思うと、ICTという方法が必要だというだけなんです。ICTを活用して学ぶということは、「楽をする」という意味ではないんです。それなしでは、どんなにがんばっても、繰り返しても届かなかったスタートラインに立てるということなんだと思います。大変でも、「これがあれば超えていける」と思えるから、がんばれる、そう実感しています。

井上智、井上賞子
ブログ「成人ディスレクシア toraの独り言」
(ブログはこちら>>

 

─■ あとがき
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直前ですが、イベントを3つ紹介させていただきます。
本メルマガの五藤が、3月11日(日)午後1時から、三重県伊賀市で講演をします。
(詳細はこちら>>

また、以前、メルマガに連載してくださった北出勝也先生が、3月31日(土)に八王子で、4月22日(日)に大阪市中央区で、ビジョントレーニング入門講座を開催します。
(詳細はこちら>>

次回のメルマガは、3月23日(金)の予定です。

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