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読み書きに困難のある子ども達のタブレット活用

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■ 特別寄稿:読み書きに困難のある子ども達のタブレット活用
■ 連載:成人ディスレクシアの独り言:光の当たる場所があっても?
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──■ 特別寄稿:発達障害児の家庭療育に役立つ教材・アプリ
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文部科学省の全国実態調査では、国内の小中学校における通常学級の各クラスに1人程度の割合で読み書きに困難を抱える子ども達がいることが報告されています。身近で重要な課題として学習障害に対する理解を高め、支援環境を整えていくことが求められます。欧米では、読み書きの困難に対して、パソコンを中心に身の回りにあるテクノロジー(アルテク)を利用した支援が以前から行われてきました。読みの困難については、文字の音への変換を可能とする読み上げ機能の他、画面の拡大表示や読み上げ位置のハイライト表示などが役立ちます。また書きの困難に対しては、タイピングや音声認識を用いたテキスト入力によって書くことの負担を大きく低減させることが知られています。

このように読み書きに対しては、情報技術(ICT)の利用によって効果的な支援が提供できるにもかかわらず、国内では、教材が電子化されていないために、その恩恵を十分に受けられない状況が続いています。障害のある子ども達に対する電子教科書の環境は整いつつあるものの、ドリルやテストなども含めると、学校で用いられている教材の大半は依然紙に印刷されたものです。そこで、私達のチームは、(1)印刷物に含まれる文字を認識して音声で読み上げられるようにする(文字認識)、(2)指でタップした部分の文章を読み上げる、(3)写真やPDFに書き込める(文字や手書きの線・写真・録音音声)という3つの特徴をもったiPad用のアプリ「タッチ&リード」を開発しました(現在App Storeから入手が可能です)。

これまでに「タッチ&リード」の利用により、読み書きに困難のある子どもたちの文章の理解度や国語のテストの成績を直ちに向上できることを、実証実験を通じて示してきました。例えば、実証実験が行われた小学校の3つのクラス(小学校1・4・6年の通常学級)では、国語の授業内で児童(計90名)全員に対して電子教科書コンテンツを載せた「タッチ&リード」を導入した後、この電子教科書と紙の教科書のどちらを使用してもよいと伝えた状況で複数単元に渡って授業を行いました。その結果、最終的に全体の約2/3の児童は紙の教科書の方が自分には適すると、以前までの学習方法に戻りました。しかし、その一方で読字障害の診断をすでに受けていた児童、および読みの苦手さについて先生が気にかけていた児童の全員が、「タッチ&リード」を使い続けることを選択しました。

読みに困難を抱える児童達は、「タッチ&リード」を利用することで次の単元から直ちにテストの成績が向上しており、自らの力が発揮されることを実感していたことがインタビューからもわかります。参加児童の中には、これまで単元テストの平均点が15点程度であったものの、「タッチ&リード」の利用によってそれが90点近くにまで向上した児童もいました。従来通りの読み書きの訓練によってこの差を埋めることは難しく、その効果からも「タッチ&リード」のような支援技術を利用して読み書きの機能を代替し、学習を進めることが合理的であると考えられます。書くことへの困難に対しても、「タッチ&リード」の利用によって成績が向上したという同様の結果が他の小学生グループに対する実践から得られました。

近年、学習障害に対する支援に関しては、米国を中心に広がるRTI(Response To Instruction / Intervention)モデルが注目されています。RTIモデルとは、初期の段階から様々な支援方法を試しながら、得られる結果を基にどのような支援が必要かを客観的に判断するものです。iPadのようなアルテクは導入も容易であり、RTIモデルの実践に適しています。学齢期という限られた時間の中で、今すぐにでも実践できる支援となりえるアルテク利用の有用性は大きいといえます。

日本では、2016年度から障害者差別解消法が施行され、その中で、合理的配慮の提供が求められる時代が到来しました。アルテクの利用のしやすさは、まさにこの配慮の「合理性」にも適合しやすく、利用可能な場面の広がりが期待されます。

以上、ここでは「タッチ&リード」をタブレット利用のアプリの例として紹介しました。この他にも学びや生活を変える様々なアルテクとその利用法があります。それらを紹介する場として、私達は、毎年、秋(今年度は9月27日〜29日)に東京ビッグサイトで開催される国際福祉機器展(H.C.R.)にて、アルテク講座を開催しています。多くの人が日常活用しているタブレット、スマートフォン、パソコン、カメラなどのICT製品を、障害のある人の生活や学習・就労支援に活かすアイデアとともに紹介しています。今年度は以下のプログラムを予定しています。参加は無料です。なお、本稿でご紹介した読み書き支援に関する内容は、9月27日12:00からの「アルテクを読み書きなどの学びのツールに変える」にて、他の役立つアプリも含めてご紹介します。よろしければご参加いただければ幸いです。

アルテク講座2017 身の回りにあるテクノロジー(アルテク)で創る豊かで楽しい生活
(詳細はこちら>>

プログラム
●9月27日
12:00‐13:00 アルテクを読み書きなどの学びのツールに変える −アルテクを用いた発達障害や認知障害のある人の生活支援− 平林ルミ(東京大学先端科学技術研究センター)
13:30‐14:30  Windowsパソコンのアクセシビリティと応用 −アルテクを用いた障害のある人の生活支援− 巖淵守(東京大学先端科学技術研究センター)
15:00‐16:00 スマホやタブレットのアクセシビリティ −肢体不自由の人がスマホやタブレットを使いこなす− 巖淵守(東京大学先端科学技術研究センター)

●9月28日
11:30‐12:30 障害者差別解消法とアルテクの意味 −合理的配慮の1つとしてのアルテク利用− 近藤武夫(東京大学先端科学技術研究センター)
13:00‐14:00 障害者雇用とアルテク −障害者雇用現場でのアルテク活用の実際−
近藤武夫(東京大学先端科学技術研究センター)
15:00‐16:00 身の回りにあるテクノロジー(アルテク)が支援技術に変わる −高齢者や障害のある人の生活支援− 巖淵守(東京大学先端科学技術研究センター)

●9月29日
11:30‐12:30 視覚障害のある人のスマホ・タブレット活用 −アルテクを用いた視覚障害のある人の生活支援− 三宅琢(東京大学先端科学技術研究センター)
13:00‐14:00 スマホやタブレットを生活支援ツールに変える −アルテクを用いた肢体不自由のある人の支援のポイント− 渡辺崇史(日本福祉大学)
14:30‐15:30 アルテクを利用した重度肢体不自由や重複障害のある人の生活・コミュニケーション支援 武長龍樹(東京大学先端科学技術研究センター)

巖淵 守(東京大学先端科学技術研究センター)

 

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──■ 連載:成人ディスレクシアの独り言
第6回 中学校時代のこと? 光の当たる場所があっても?
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荒れた子どもだった中学時代ですが、同時に、華やかなスポットライトを浴びた時期でもありました。

小学校時代から運動神経の良さは、いつも褒められていました。でも、所詮は「学校で一番足が速い子」止まりでした。それが、中学で始めた陸上競技で、素晴らしい指導者に恵まれたこともあり、地域一、大阪一、近畿一と言われる記録が出せる選手になりました。

実は「陸上」を選んだのにもわけがあります。
「走るだけ」のイメージが強い陸上より、バスケットや野球の方が楽しかったのが、本音です。ただ、持ち前の運動神経でこなしてはいたものの、球技は「ボールが消える」という経験を何度もしていました。動いているものを、目で追い切れないんです。なので、カンでバットを振ったり、グローブをはめた手を伸ばしたりしていました。相手のボールが遅い時は、それでも何とかなっていたんですが、次第にそれでは通用しなくなってきていました。そのため、「球技は無理だ」という思いがあり、陸上を選びました。

しかし、小学校で一番足が速かったとはいえ、中学に入ればもっと速い子がたくさんいました。結局、自分は筋肉が柔らかくばねがあったので、「跳躍」の競技に進みました。そして、たまたま新規採用でやってきた若い体育のY先生に出会います。当時、先生ご自身も現役のジャンパーだったこともあり、丁寧で的確な指導を受けるチャンスに恵まれました。

40年以上前の運動部です。結果は「根性」が出してくれるというのが大半の雰囲気でした。でも、Y先生は違いました。「いいか、遠くにとぶためにはスピードが必要なんだ。そのためにはこの筋肉が強くならないといけない。でもここっちの筋肉がつきすぎるとバランスが悪くなる。だからこんな運動をして細くてしなやかな筋肉にすんねん」
「いいか、シザース※は走ってきたそののままの力が自然に流れている動きやねん。お前のはかっこだけ。手を振り回しているだけや。走っているままの力が上に向かうために手が反動になんねん。砲丸投げややり投げは、手から離れた瞬間にどれだけとぶかが決まってんねん。まあ風の力はかかるけどな。でもな、人間は違うねん。踏み切った後、体の動きで距離をのばせんねん」
※編者注 シザース 走り幅跳びでのはさみ跳び

今も、当時の先生の声そのままに、たくさんの教えを思い出すことができます。Y先生の話は面白かったし、納得できました。それまで、無意識に動かしていた体を、先生の言葉を聞いて、考えながら見直していく。そして跳んでみる。すると、それまでの我流で跳んでいたときとは違う世界が見えてきました。
「本当だ」「すげぇ」
達成感と昂揚感、Y先生との練習には、そんな学びがありました。

自分は、学ぶことに飢えていたんだと思います。陸上練習の中で、新しい知識が、自分の体を通して入ってくる。読み書きでなく、動くことで理解が広がっていく。たまらなくおもしろかったことを、今も鮮明に覚えています。

Y先生は「お前にはわからへんやろ」とバカにしたり説明をはしょったりすることなく、繰り返し繰り返し、根気よく教えてくださいました。記録は面白いように伸びました。自分はY先生を信頼していたし、先生も自分を信じてくれていたと思います。

どんなタイミングでどんな角度でとべば、一番遠くにとべるのか。ヒントを自分で見つけ出してY先生に質問する。するとすぐにこたえが返ってきました。考えて聞いてまた考えて、試して修正してまた考えて。やってみて見直してまた考えて。そんなすべてが面白かった。中学時代一番いい授業を、Y先生にしていただいたんだと思います。たくさんの賞状やメダル、表彰式の常連。他校からも一目置かれる、そんな輝かしい経験もさせてもらいました。

でも、そんな栄光も、「学校生活」の真ん中じゃないんです。学校の真ん中は授業です。陸上で満たされる時間は、ほんのわずかでした。日々は、「白紙のテスト」と、自分がいないものとして進む授業の繰り返しでした。聞いているのは楽しかったけど、相変わらず、何一つ学習として評価されることも、学力として積みあがっていくものもない状況が続いていました。分厚い教科書をすらすらと読み、難解な問題をどんどん解いていく級友の中で、何もせず、ただじっと黒板を見据えているだけの自分。毎日毎日6時間、「お前はダメなんだ」というメッセージの中で過ごす日々は、自分を追い込み、削り取っていきました。

陸上へのめりこむのと相反するように、荒れる自分もエスカレートしていきました。
Y先生は、何度も警察に迎えに来てくれました。喧嘩をしないように、送り迎えまでしてくれたこともありました。きっと、選手としての自分、陸上の弟子としての自分を大事に思ってくれてのことでしょう。わかっていたし、ありがたかったです。親の言うことより、Y先生の言葉が響きました。それでも荒れることをやめられなかった。

だって、荒れることをやめれば、また、小学校の時のように、みんなの前で「恥をかく時間」が待っていると、確信していましたから。どうしてもそこには、戻りたくなかったんです。

井上智、井上賞子
ブログ「成人ディスレクシア toraの独り言」
(ブログはこちら>>

 

──■ あとがき
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今回は、障害のある子のさまざまな支援を展開する、東京大学・先端科学技術センター(通称、先端研)の巖淵守先生からの寄稿を掲載させていただきました。国際福祉機器展(H.C.R.)に行かれる方は、先端研の特別企画セミナーの参加をお勧めします。

また、来週月曜日9月11日には、福岡市民会館で本メルマガ編集の五藤が講演させていただきます。
「発達障害とは何か見つめなおす」後援:福岡県教育委員会、福岡市教育委員会
(詳細はこちら>>

次回メルマガは、9月22日(金)です。