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支援技術:スイッチ 1 つで広がる世界

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■ 連載:支援技術:スイッチ1つで広がる世界
■ 連載:発達支援の現場から:子どもたちの豊かな放課後を目指して
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──■ 連載:障害の重い子どものコミュニケーションを支える支援技術
(第3回)スイッチ1つで広がる世界
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●おやゆびのことば
約20年前、東京都立光明養護学校に勤めていたときに高等部に所属していた飯田洋さんという生徒がいました。彼は、ムコ多糖症という進行性の病気で自力で体を動かすことが難しく、日常生活はほぼ全介助です。

しかし、当時彼を担当した伊藤守さんがMacintoshで動くKe:nx(キネックス)という入力装置とソフトのセットを用意し、自分の意思を表出する方法を提供しました。飯田さんはそれを使って、日常的な学習だけでなく、メールなども活用し世界を広げていました。飯田さんはその後、自費出版で「おやゆびのことば」※1という小説本を出し、私たち身近な人に配布してくれました。

※1 おやゆびのことば 表紙 (画像はこちら>>

そのあとがきにこんなことが書かれています。

「この本の題名は『おやゆびのことば』といいます。なぜかというと、おやゆびがぼくのことを伝えてくれるからです。パソコンに文字を入力するとき、たいていはキーボードとマウスを使います。しかし、ぼくの場合はどちらも使うことができないので、スイッチひとつで入力しています。そのスイッチをおやゆびが押しているのです。

ぼくのおやゆびは、今までたくさんのことばを伝えてくれました。うれしくなったことや、楽しかったこと、思い出に残ったこと・・・など。思い出せないぐらいの「おしゃべり」をしてきました。インターネットを利用して、遠くの友達ともメール交換できるようになりました。家にいながら、遠くの人とも話ができる・・・。最高ですね!

そしてとうとう、本まで出してしまいました。まだキーボードを使えていた頃から、現在に至るまでに創作した作品(物語、詩、俳句、短歌)と、おりにふれて綴った作文とをまとめて収めました。
(中略)
おやゆびがまだまだ「しゃべり」足りないそうです。
これからも「しゃべらせ」続けるので、楽しみにしていてください。
(以下略)」

まさに、スイッチ1つあれば世界が広がることが出来るということを教えてもらいました。今なら、インターネットを通じて彼はもっとたくさんの発表をしていたかもしれません。20年前のことですが、いま見返しても彼が生き生きと過ごしていたことがよく分かりますし、「スイッチ1つ」が大きく世界を広げると思います。

●どんなスイッチがあるの
さて、スイッチにはどんなものがあるのでしょうか?
経験的には、押すタイプのスイッチで8割方のニーズは満たしているように感じます。その典型的なものがビッグスイッチというものです※2。しかし、標準的なものでは操作が難しいからこそ、支援機器を使うのですし、スイッチにその人を当てはめるのは本末転倒です。
※2 ビッグスイッチ (画像はこちら>>

ですので、まずはどんなスイッチがあるかを知っておくといいです。本稿ではすべてを紹介することはできませんので私のやっているマジカルトイボックスで作ったオリジナルのスイッチ※3を1つだけ紹介します。
※3 Wクリップ棒スイッチ (画像はこちら>>

これは、Wクリップ棒スイッチというものです。これの原型はまな板立てに全方向のスイッチを入れた「まな板立てスイッチ」というものでした。それから、様々な進化を経ていまのこの形になりました。

マジカルトイボックスのイベントでは、この製作会も行い、たくさんの方に作ってもらい、多くの特別支援学校で活用されています。また、スイッチの使い方もいろいろな人が工夫をし、手で押すのだけでなく、足で押したり、ほっぺたで押したりなど様々なバリエーションがあるのが特徴です。

この他にどんなスイッチがあるかを知るには以下の3つのサイトがおすすめです。

・マイスイッチ  (詳細はこちら>>

・特別支援教育教材ポータルサイト (詳細はこちら>>

・AT2ED (詳細はこちら>>

これらのサイトの使い方は、それぞれ説明があるのでそれに従ってください。ただし、一つ言えるのは、そのままそれらがすぐに使えるわけではなく、利用する人のニーズをよく把握し、アセスメントをしてから使わないと失敗するということです。機器ありきではなく、ニーズや目的をよく把握し、最終的には本人の意思を尊重することがとても大切です。

●スイッチはどこにつながるの
さて、上記のスイッチを利用してパソコンなどを使うという場合、どこにつなげればいいでしょうか?一般的には、これらは標準化された3.5φと呼ばれるイヤフォンなどで使われるモノラルジャックで接続するようになっています。しかし、パソコンにはそんな端子はありません。

そこで、導入されるのがスイッチインタフェースと呼ばれるものです。これには、大きく分けるとUSBで接続するものとBluetoothで接続するものがあります。最近はタブレットPCが普及しているのでBluetoothで接続するものが多く、「できiPad2。」「なんでもワイヤレス」などがよく使われています。

・できiPad2。 (詳細はこちら>>

・なんでもワイヤレス (詳細はこちら>>

●スイッチで何が出来るの
スイッチをパソコンにつなげれば、前述した飯田さんのように文章を綴ることができます。それには、専用のソフトが必要となりますが、最近のWindowsやiPadなどでは、標準の機能で、スイッチ操作で文章が綴れるようになってきています。

しかし、専用のソフトの方がサポートがあったり、より機能も豊富なので様々な使い方もできます。Windowsではオペレートナビ、iOSではトーキングエイド for iPadなどは、実績もあり、ユーザーも多いので情報も得やすいでしょう。

このほかにも様々なソフトがあります。私の運営している「kintaのブログ」にはこういったソフトを整理して紹介していますので、これも参考にしてください。

・オペレートナビ (詳細はこちら>>

・トーキングエイド for iPad (詳細はこちら>>

・kintaのブログ (ブログはこちら>>

金森克浩(日本福祉大学(2017年4月より))

 

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──■ 連載:発達支援の現場から
第2回 子どもたちの豊かな放課後を目指して
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生活支援センターわたぼうしでは、現在 放課後児童健全育成事業(学童保育事業2か所)、放課後等デイサービス事業(小学生対象1か所、中・高校生対象1か所)、児童発達支援事業、生活介護事業、就労継続B型事業の5つの事業を行っています。開設当初は児童を対象にした事業を中心に行っていましたが、その子どもたちが成長し、地域で自分らしく暮らし続けていく、自分の力を発揮する場所が必要となり、その選択肢の一つとして、大人の方を対象にした事業を2015年4月に開設しました。ライフステージに合った多様な事業展開へと歩みを進めていますが、法人設立時以来、子どもたちがその年齢相応の経験から学ぶ場を、どの子どもにも保障したい、という大きな柱は変わっていません。
連載2回目は、子どもたちの放課後活動の歩みをお伝えします。

学童保育は「児童福祉法第6条の3第2項の規定に基づき、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学校に就学している児童に対し、授業の終了後に小学校の余裕教室や児童館等を利用して適切な遊びおよび生活の場を与えて、その健全な育成を図るもの。」と規定されています。この規定は、もちろん障がいのある児童も対象になっています。生活支援センターわたぼうしでは、開設当初から障がいのある児童も学童保育で受け入れを行ってきました。同時に、2003年4月に施行された支援費制度の児童デイサービス事業を開始し、地域の子どもたちが豊かな放課後を過ごせるよう、取り組みを始めました。

子どもたちが子ども集団の中で学び、育ち、暮らしていくことの必要性を地域に広げていく、そんな役割を持ちながらの活動でしたが、当初は多くの困難もありました。NPO法人という仕組み自体が浸透していない中、全くの新規参入の団体の取り組みです。学童保育が未設置の学区、ましてや児童デイサービスとは何かも理解されません。そして、制度の壁。おそらく、この壁が法人の想いを貫くための一番の困難だったと、今となっては懐かしくさえ感じています。

開設にあたり、児童デイサービス指定申請の相談に向かった先で、学童保育と児童デイサービス事業は「制度が違うので同じ部屋で一緒に過ごしてはいけない」「それぞれのスタッフは分けなくてはいけない」「デイサービスの子どもは、極力部屋の中で過ごさなければいけない」「学童の子どもたちと、デイサービスの子どもたちが一緒に活動をしてはいけない」等、してはいけない、の指導尽くしでした。

税金が使われる事業なのですから、もちろん多くのルールはあるでしょう。専用スペースや配置スタッフについては、現在の放課後等デイサービス事業でさらに明確に規定されているところですが、部屋の中で過ごさなければいけない、学童の子どもたちを一緒に活動させてはいけない等は、現行のガイドラインに照らし合わせればまるで笑い話です。突然、今までの正しさが変わる危うさ。子どもたちの放課後は、目まぐるしく変わるその時の「正しさ」に左右されているのが実情です。

学童保育の子どもも、児童デイサービスの子どもも、経験から多くのことを学び成長する主体としての「子ども」であり、制度で分けられるものではありません。その時の「正しさ」に歪められるものでもありません。共に過ごし育ちあう中で、次の社会を作る大人になっていくのだと、当時は信じ、今は確信しています。

ダメ、と言われるとやりたくなる。そんな性分が功を奏し、子どもたちはみんな一緒に色々な活動をしてきました。公園や児童センターでの遊び、夏休みは学校のプールを借りてプール遊び、畑作り、わたっこ祭り、親子キャンプ、子どもキャンプ、わたっこ商店街、フリーおやつ、おやつ作り 等々。今も続く取り組みもあれば、大きく発展したもの、新しく取り組んでいるもの様々ですが、どの活動、どの取り組みも、すべて子どもたちと作ってきた財産です。
※わたっこ祭りは、地域の皆さんも参加できる法人全体のお祭り
※わたっこ商店街は、子どもたちで作る子どもの街
※フリーおやつは、子どもたちが自分でお金を持って、おやつの買い物

このように、何もかも手探りで始めた活動でしたが、児童デイサービスの児童の個別の支援計画の作成は勿論、学童保育では学年ごとの保育計画を作成し、学童保育に在籍する障がい等で個別に配慮や工夫のいる児童には月毎の目標、支援方法を明確にした1年間の保育計画を作成しました。さらに、学童、デイサービス職員合同の毎週会議で、実践を振り返り、計画を見直し、修正を行っていました。活動のほとんどを学童、デイサービス合同で行っていたため、職員間の情報共有は命綱でした。ただ、やみくもに一緒に過ごすことではなく、一つ一つに根拠を持ち実践することの必要性を当時の子どもたちから学び、今に活かせている事に感謝しています。

子どもたちは適切な機会、場があれば自分の持っている力を最大限に発揮することが出来る、とても頼もしい存在です。学童保育、児童デイサービスそれぞれに違う役割はあったのだと振り返りますが、一緒に過ごしてきた経験こそ、わたぼうしの強みなのだと胸を張って言える日が来た、そう思っています。

今年4月、2018年度の報酬改正に先立って放課後等デイサービスの人員基準を中心にした法改正が行われます。歴史は繰り返される、ということでしょうか。支援費制度※4から障害者自立支援法※5へ大きな制度変更がなされた際、当時の児童デイサービス(学齢期)は廃止の方向で進んでいたことをご存知の方も多いと思います。当初予想していた設置数を大幅に上回っていた児童デイサービスが、制度全体の財源を圧迫しているという理由でした。結果的には、児童デイサービス㈵型、㈼型、という名称で実質的に学齢期を対象にした児童デイサービス(㈼型)として存続しましたが、想像以上に報酬単価が引き下げられました。事業を継続するにはとても厳しい単価となり、余儀なく撤退した事業所もあったのではないかと思います。

※4 支援費制度は2003年から導入された福祉サービスの制度。これにより、今まで行政がサービスの種類や利用を決めていた「措置」から、利用者(児)が直接利用したいサービスを決め、事業所と直接契約を行う「契約」制度へ大きく変換した。

※5 障害者自立支援法は2006年4月に施行された法律。障がいの種類(身体障がい・知的障がい・精神障がい)に関わらず、共通した福祉サービスを共通の制度により提供することで、障がい者の自立支援を目指す。サービスの提供主体は市町村に一元化された。

わたぼうしでも、たちまち経営上の課題に突き当たり、一時的に他の事業に置き換えての児童デイサービスの運営になりました。子どもたちの放課後生活の場はなくしてはいけない、その思いで事業を続け、いよいよ児童福祉法に規定された「子どもの発達」の場としての制度になりました。現在の放課後等デイサービスです。自立支援法で設定された単価から大きく引き上げられたことも影響しているのでしょう、新規参入の事業所が爆発的に増えました。

さて、これからについてです。2018年度の報酬改定で、同じように大幅な単価引き下げになったとしたら。事業所の量から質へ。質の保障にガイドラインの策定や今回の人員基準の見直し。いろいろ考えることがあります。放課後等デイサービスに求められる質とは何か。役割は何か。次回に続きます。

大田優子(生活支援センターわたぼうし)

 

──■ あとがき
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お恥ずかしながら、前号で「発達支援の現場から」の著者のお名前を間違えておりました。「太田」ではなく、「大田」優子さん、です。謹んで訂正し、心よりお詫び申し上げます。

次回メルマガは4月21日(金)です。