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認知テストを就労支援へ役立てる

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■ 連載:認知テストと発達障害:認知テストを就労支援へ役立てる
■ 連載:自閉症児の四次元ワールドへようこそ:「困ったこと」パート2
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──■ 連載:認知テストって何? 最終回
(第10回)認知テストを就労支援へ役立てる
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こんにちは、学校心理士の青木瑛佳です。これまで9回に渡って「認知テスト」に関して解説させていただきました。このシリーズの最終回となる今回は、前回に引き続き、認知テストの結果をどう役に立てるかということについて書かせていただきます。前回は教育の場での役立て方を中心に書きましたので、今回は就労支援へどう役立てていくかということについて書かせていただこうと思います。

昨年の4月に障害者雇用促進法が改正されました。この改正では、何点か大きな変更がありました。一点目は障害者の定義で、これまでは身体障害・知的障害のみが雇用義務がある障害者に含まれていましたが、ここに新たに精神障害と発達障害が含まれることが明記されました。これらの障害を理由とした雇用や待遇面での差別の禁止も明記されました。

二点目は障害者に対する「合理的配慮の提供義務」が加えられたことです。雇用主は、障害を理由とした待遇差別をなくすため、過重な負担にならない範囲で「障害者の特性に配慮した」施設の整備や援助者の配置を行う必要が出てきました。

この他、法律改正により、雇用する障害者の割合を今までよりも増やす必要が出た上、今までは障害者を雇う必要がなかった小規模企業への障害者雇用義務も追加されました。さらに、障害者側に雇用環境に不満が生じた場合、企業がその不満を解決する努力義務も生じました。

つまり、この法律改正により、企業/事業所は今までよりも積極的に、障害者が働きやすい環境作りに取り組む必要が出てきたわけです。また、雇用する時点においても、どのような特性の障害者なら、自分のところで雇って能力を活かせるか、ということをより真剣に考える必要が出てきたわけです。

一方、障害者側の視点で見た場合も、この法律改正により、「障害者枠」で働くことが出来る企業/事業所の選択肢が増えたことで、よりしっかりと自分の特性を見極めて職業選択をしていく必要が出てきたと考えられます。

この「企業/事業所と障害者のマッチング」「障害者が働きやすい環境づくり」に認知テストが役に立つのではないか、と私は考えます。では、具体的にどう活かせばいいでしょうか?

(1)    企業/事業所と働く側のマッチング

以前の回でも述べたように、認知テストを行うことで、個人の認知的な強みと困難さがより明確になります。現在、日本で成人を対象として最もよく用いられている認知テスト、WAIS-IIIでは、言語理解力、知覚推理力(目で見たものを元に考える力)、聴覚短期記憶力(耳から覚える力)、処理速度の4つの分野に関して、能力が分かります。また、課題ごとにグループ化して点数をみていくことで、さらに様々な能力が分かります。

では、WAIS-IIIの結果は、どのように職業選択につなげていけばよいでしょうか?仕事によって求められる能力が異なるわけですから、低い能力をあまり求められず、高い能力を活かすような仕事につくことが理想と考えられます。

例えば、言語能力に比べて視覚認知能力(WAIS-IIIでは知覚推理分野、特に)が高い場合、接客や文章作成などの言語を主に用いる仕事よりも、美術工芸品の作成、精密機械での作業など、細かい形をしっかり目で認識する力が活かせる仕事が向いているかもしれません。反対に、言語能力の方が視覚認知能力より高い場合は、何かを正確に作ったり分類したりするよりも、ことばでのやり取りが中心となる仕事の方がよいかもしれません。

処理速度も認知テストの結果から分かる能力の一つです。処理速度が遅い場合は、状況に応じて素早い決定を次々にこなしていかなければいかない仕事(例:外科助手等)は向いていないと考えられます。そのため、自分のペースで進められる仕事や、一つの作業に対してじっくり時間をかけて完成させていくタイプの仕事の方が向いていると考えられます。

課題ごとのグループ化で分かる能力の一つは分析力・論理力です。WAIS-IIIでは「類似」「行列推理」などで測定されています。これらの点数が高かった場合は、プログラマーなどの情報技術職が向いているかもしれません。

最後に、認知テストの点数が、あまり分野ごとの偏りがなく全体的に低かった場合ですが、このような場合は、同じ単純な作業を繰り返して出来る仕事につく方が(例:同じトイレの清掃)、複雑な思考を要求される仕事よりも、スムーズにこなせるのではないかと考えられます。

このように、認知テストの結果は、仕事を探していく際、また雇用する側の立場からは与える仕事の内容を考える際に利用できるものであると思います。

(2)    被雇用者が働きやすい環境づくり
認知テストの結果は、適切な職場環境づくりにも非常に役に立ちます。アメリカの学校の場合、認知テストや他の検査の結果に基づき、学習環境をどう調整していくかが決定され、個別支援計画に記入されるのですが、同じように、これらの結果を職場での環境調整に役立てていくことは可能であると思います。

例えば、先ほど職業選択にも利用できると考えた、言語理解能力と視覚認知能力の違いですが、この差を見ることで、適切な指示の出し方がはっきりします。

言語理解能力が、視覚認知(知覚推理)能力よりも高かった場合、言葉での指示を多くすることが大切だと思われます。多くの人の場合、目で見た方が分かりやすい仕事でも(例:色や形別に品物を分類していく)、言葉を添えることで、より正確に仕事が行われると考えられます。

反対に、知覚推理能力が言語理解能力よりも高かった場合は、口頭での指示だけでなく、スケジュール表や手順表など、目で見て分かるものを渡して仕事の手順を説明する方が、正確でスムーズな仕事につながると思われます。

また、WAIS-IIIの他の2分野「短期記憶」と「処理速度」ですが、この二つのどちらかが低めである場合、口頭での指示だけでは指示が正しく伝わらないかもしれません。そのため、作業中に指示の内容を常に見直すことが出来るように、指示の内容を文章や図で示したものを書面で渡しておくと良いかもしれません。

このように、認知テストの結果は、配慮が必要な個人を雇用した時に、職場環境を整える上で重要なものとなります。また、そのような個人の就労を支援する援助者は、認知テストの結果を参照して、具体的な環境調整の方法を職場に提案していくことも、より安定した就労につながると考えられます。

いかがでしたでしょうか?このように、認知テストとは、ただ個人の強みと困難さをはっきりさせるためだけではなく、結果の使い方次第では、学業や就労など日々の生活をより充実したものにするツールとなり得るのです。今回は取り上げませんでしたが、検査者が記録した検査時の様子も、職業選択、就労環境調整のためのヒントになり得るでしょう。

この記事をもって、認知テストの解説は終了となります。記事をお読みいただき、本当にありがとうございました。

青木 瑛佳(学校心理学 Ph.D.)

参考資料:
Doyle et al., Psychological assessment of adults with specific performance difficulties at work (online pdf document)
※PDF資料:(資料はこちら>>

Volkmar, Reichow, & McPartland (2014) Adolescents and adults with Autism Spectrum Disorders: Springer, New York

 

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──■ 連載:自閉症児の四次元ワールドへようこそ
(第4回)「困ったこと」パート2
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こんにちは。堀野めぐみです。前回は発達障害の「困ったこと」についてあれこれ書きましたが、今回は、長男(自閉症)の「困ったこと」について考えてみたいと思います。

よく支援者が「子どもが困っているから」と言っているのを耳にします。
もちろん、本当に「困っている」と思われることも多いのですが・・
本人が「僕は、困っています。」と言っているわけではありません。
自閉症は、自分自身のことや事実を客観的に捉えることが難しいという特性があります。
それなのに、困っている時だけは、自分が〜で困っている、〜できなくて困っている。
というように考えることに違和感があるのです。
何故なら、長男は、自分が困っている状況かどうかも分かってないように思えるからです。

学校にいた時も、現在の職場でも周りの人から「困ったら言ってね。」とか
「困っていることは何かあるかな?」とかいう言葉は、何度も言われてきました。
しかし、私が息子の気持ちを代弁するならば、
「困っているか?困っていないのか自分で分かったら、こんなに苦労しないよ・・」って感じでしょうか。

前回、困ったことを乗り越えた時、子どもたちは、成長する。と書きました。
長男は、「うっかり忘れ物」などはありませんが、逆に自閉症の場合、「失敗は成功のもと」とは限らないのも事実です。
彼らは、「忘れられない脳」を持っているので、小さな失敗が、トラウマになることもあるのです。
しかし、転ばぬ先の杖が難しい時は、視覚的に分かりやすく、かつ丁寧で肯定的な言葉で教える必要があります。

それから自閉スペクトラム症の人の行動問題の中に「こだわり」というのがあります。これが、親から見た「困ったこと」の一つに挙げられるのではないでしょうか?ここでミソなのが、親から見たこだわりは「困ったこと」に見えていて、本人たちは決して困ったりしていないことが多いということですよね〜。

面白い事に、この「こだわり」は時期的なもので、やがて変化していきます。何かを集めたり、きれいに並べたりするのも、ひとつのこだわりでしょう。うちでは、ドアや窓、襖などはちょっと開いているのが、彼はとても気になるようです。彼に任せておけば戸締りは完璧! また、テレビやエアコンのリモコンを他の人には絶対に渡さない、などにも、強いこだわりが見られます。

現在は、小銭にとても強いこだわりがあり、私の財布から小銭を全部出して、貯金箱に入れてしまったり、100円玉だけを自分の財布に入れて、ファミリーマートのとり五目おにぎりだけを1列大人買い・・・ってこともありました。

時間と心に余裕があったら、我が子のこだわりをじっくり今一度、観察してみいてはいかがでしょうか? 今のブームや好き嫌いがはっきりと分かります。

最近の長男のブームはなんと!?英語!! 動物や野菜、果物など本を見ながら英語で言っています。絵本を見ながら「きゅうりは?」と言うと「キューカンバー」とか「人参は?」と言うと「キャロット」などと言っています。うちの子天才かも?って思っていたら、「桃は?」と聞くと答えは「バーミヤン!」って・・・(笑) 「キリンは?」と聞くと「キーリン!」って・・・(笑)下手なお笑い芸人より面白いです。自閉症って奥が深いですね〜。

私は、社会的なルール違反や、自分や誰かを傷つける行為や迷惑になるようなこだわりはやめさせるように努力をしていますが、それ以外でしたら、無理にやめさせることはしないでいます。この前は、せっかく給料もらったのに、カレーとマーボー豆腐を大人買いしてきたのはかなりショックでしたけどね(笑)何なら豆腐も一緒に買ってきてほしかったな〜(笑)
※買ってきたカレーとマーボー豆腐 (画像はこちら>>

また、自分の思い通りにならないと、「パニック」になる行動問題も見られます。そんな時はカームダウンスペースで静かに気持ちを落ち着かせることが大切だと思います。

学校の活動って、毎日同じではないし、式典や運動会や学芸会、実習などもあって、なかなか落ち着かないですよね。そんなイレギュラーな活動が苦手で、みんなと一緒に行動できずに、一人でカームダウンスペースで過ごしているお子さんって多いと思います。授業参観に行ったのに、息子が教室にいない・・・とか。そんな時って、親は何となく不穏で、胸が苦しくなりますから、先生や支援者がきちんと親に説明してくれると安心すると思うのです。

堀野めぐみ

 

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──■ あとがき
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10回の認知テストの連載、いかがでしたでしょうか? 編者が特に聞きたいことを中心にまとめていただいたので、個人的にはとても参考になりました。読者の皆様にはご感想などお聞かせいただければうれしいです。

3月4日(土)に福岡県飯塚市で講演をすることになりました。ご興味のある方はご参加ください。
※講演会の内容と申込PDF (詳細はこちら>> ※本講演は終了しております。)

次回メルマガは3月10日(金)です。