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友田明美氏講演:いま、子どもの心の育ちを考える!

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■ 報告:友田明美氏講演「いま、子どもの心の育ちを考える!」
■ 連載:行動チャートを用いてより良い行動をひきだす
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──■ 報告:友田明美氏講演「いま、子どもの心の育ちを考える!
〜被虐待児、発達障がい児の脳科学」
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第37回子どものからだと心・全国研究会議特別講演をレポートします。友田先生は、日米科学技術協力事業「脳研究」分野グループ共同研究の一貫として、2003年からハーバード大学のタイチャー准教授と長年、小児期の虐待体験に伴う脳の器質的・機能的な変化を、脳MRI画像を使って調査研究してこられました。今回はそれに基づき、約2時間の講演を行われました。筆者の判断で、メルマガ読者に知っておいていただきたい部分に絞ってご紹介させていただきます。

○発達過程の子どもの脳の脆弱性

虐待にあうことの他に、家庭内暴力(DV)を目撃したりすることなど、いろいろな状況で脳の発達が阻害されることが、数多くの脳研究から分かってきているそうです。そういった状況になると、子どもの脳の中にストレスホルモンが分泌され、それが脳の発育を遅らせるメカニズムがあるとのことです。友田先生はMRI等を使ってこれまで1455例の子どもの脳の調査を行い、いくつかのタイプの状態に置かれた子どもの脳と、それ以外の子どもの脳とを比較してこれまで研究を行ってこられました。

ここで、レポーターとして先に述べておきたいのは、発達障害との関わりです。発達障害は先天的なものですから、子育ての仕方によって発生するものではありません。ただし、後述する「言葉による暴力」に記載するように、子どもの存在を否定する言葉かけは、脳に大きな影響を与えることが分かっています。ADHDの子ども等はワーキングメモリの不足などで、やってはいけないことを思わず行ってしまうことがあります。それに対する叱責が過度にまた継続的になると、保護者は意識せずに二次障害を引き起こしてしまう可能性があることを確認しておきたいと思います。

以下、脳に影響を与える具体的な事象です。

1) 身体への暴力
身体への頻繁な暴力を受けた子どもの前頭前野は、それ以外の子どもよりも19%も容積が減少している結果とのことです。前頭前野は抑制力などを司る器官です。その部分が未発達となることで、問題行動を起こす原因となる可能性が出てきます。

体罰という言葉がありますが、痛みによるストレスは虐待と同じ効果を引き起こします。しつけという意図に反して、結果として別の悪影響を与えてしまう可能性に、十分に留意したいと思います。

また、今回は具体的な言及はありませんでしたが、性的虐待を受けた子どもは視覚野の発達が不十分で、視覚認知機能に問題が発生する可能性があるそうです。

2) 言葉による暴力
その存在を否定するような言葉がけを続けられた子どもの聴覚野は、未発達な状況にあるそうです。人間の脳は、主に2〜3歳の頃に「刈り込み」と呼ばれる、あまり使われない神経細胞の死滅が行われます。言葉による暴力を受けた子どもたちでは、聴覚野での刈り込みが適切に行われていないと考えられます。言葉を変えると、聴覚認知機能が適切に行われない可能性がある、ということができます。聞きたくない言葉を聞いている内に、脳は聞く能力を伸ばすことをやめてしまうのかもしれません。

3) DVの目撃
家族内で、自分の愛する親がもう一方の親に対して暴力をふるう様子を目撃することは、知的能力、特に語彙理解力の低下を引き起こす可能性があるとのことです。脳のデータでいうと、視覚野の容積が6.1%、そうでない子どもの脳よりも小さいとのことです。つまり、視覚認知機能が適切に行われていない可能性がある訳です。さらに、その目撃によってトラウマを生じさせる場合があり、発達性トラウマ障害という重篤な障害を引き起こす可能性があります。

平成16年に制定された児童虐待防止法では、子どもの面前での暴力行為は、虐待と判断され、禁じられています。夫婦喧嘩は時には発生するものでしょうけれど、子どものいないところで行うように配慮することが大切です。

4) 育児放棄
大きな成長が望まれる時期に必要な栄養が与えられないと、成長不全になります。それよりも大きな問題が心の問題、愛着が形成されないということです。母親を中心とする特定の人との強固なつながりを形成し、守られているという自信を持つことで、子どもは未知の世界に出て行くことができます。
愛着とは、個体維持のための本能的(生物的)な行動で、5歳までの養育者との適切な関係が維持されない場合、反応性愛着障害(RAD)という重篤な障害を発症します。

RADは多動性行動障害の症状を持つことが多く、ADHDと間違えられることがあります。ただ、ADHDはほめられると反応するのに対し、RADは無反応で、そのため、学習に取り組ませることが難しいなど、対応が難しい面があります。

◯虐待は世代間連鎖する、が、その改善の可能性も

虐待されていない人と比べ、虐待された人が自らの子どもを虐待する確率は6倍になるそうです。自らの経験から育児に対して不安を持つことが原因で、不適切な育児になり、それがひいては育児放棄や虐待につながる可能性があります。

ただし、de Lange(2008)の研究など、かなり重度の虐待を受けた人でも、9ヶ月間の認知行動療法で改善したという報告があります。友田先生の患者では生後9ヶ月の愛着障害児が、原因となった祖母と引き離したことで、3ヶ月で回復したケースをご紹介いただきました。

対応には以下の点が大切だと教えていただきました。
・安心して生活できる場の確保
・愛着形成を促す援助
→ 子どもに対するというよりも、愛着の対象になる人が、そのようになれるように物心面合わせた支援が大切です。
・子どもの生活と学習支援
・フラッシュバックへの対応とコントロール
・解離※に対する心理的治療
※解離は、多重人格など、重篤な虐待の結果生じる症状

◯社会全体での対応が求められる

児童虐待によって生じる社会的な経費や損失は、2012年度の試算で年間1兆6千億円にのぼるとされています。虐待が起きるのは、虐待する人の問題というよりも、その人に虐待をさせない社会的支援がないから、と考えざるをえないように思います。筆者はこの領域は不案内なので、今後、一層勉強しなければならない、と思われられた講演でした。

私のレポートの不足を補うために、友田先生の著書を2冊、ご紹介させていただきます。

「新板いやされない傷−児童虐待と傷ついていく脳」診断と治療社、2012
「子どものPTSD」友田明美、杉山登志郎、谷池雅子編、診断と治療社、2014

(五藤博義)

 

──■ 連載:ペアレント・トレーニングの活かし方
(第6回)行動チャートを用いてより良い行動をひきだす
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今回は行動チャート(BBC:BetterBeheviorChart)を作ることで、よりよい行動を増やしていきます。行動チャートは、朝や食事時、寝る前など一定の時間帯の、特定の行動を増やす、あるいは減らせるように行動を表にしたものです。

【行動を確認する】
行動チャートを作る前に、一定の時間帯での行動を5〜6取り上げます。
例えば、朝の時間として、行動を「7:00までにひとりでおきる」「7:10までにトイレに行く」「7:30までにひとりで着替える」「7:50までにご飯を食べる」「7:55までに歯をみがく」「8:00までにランドセルを玄関に用意する」とします。この行動を平日の一週間観察します。一週間のうちにどのくらい行動できているかをチェックします。

子どもが進んでする行動(週4〜5回できる行動)を◎、時々する行動(週2〜3回)を○、まれにしかしない行動(週1回)を△として、行動を確認します。この時、声をかけてできた時には、その記号に( )をつけます。
【記入されたチャート例】

【行動チャートの作り方】
チェックした一週間の行動結果を参考に、チャート表を子どもが容易に記入できるように作ります。できたことをほめてもらい、気持ちよく子どもが次の行動に移れるようにするためです。その流れを作るために、チャート表の最初の部分は、◎や○の項目から始めるようにします。行動の順番で△が続くようなら○の行動と取り換えます。もしも、△ばかりで○の行動が無いようなら『声をかけたら着替える』『一緒に〜をする』など、○になるように手助けを加えた行動にします。
【できたチャート例】(画像はこちら>>

また、項目を減らして、達成感が得られるようにしておくこともよいでしょう。チャート表を付けることで、できていることが視覚化されて楽しくなったり、褒められてうれしくなったりすることを体験できるように作ります。
イラストや色を加えて、行動の項目をわかりやすくしておくことよいでしょう。(着替えには洋服の絵、歯をみがくには歯ブラシ等)

行動の見通しが立てやすいように、時間設定をした方が良いのですが、子どもの中には時間の設定があると、却って時間にこだわってしまい、チャートを進められないこともあります。その場合には時間設定をせずに、行動の項目だけにしましょう。

兄弟がいる場合に一緒にやりたがるようであれば、一緒に楽しんだらよいと思います。その場合は、行動の項目(課題)と評価基準などが年齢相応に合っているかを検討します。場合によっては、同じものではなく兄弟用に別に作成したほうが良いかもしれません。

【行動チャートの使い方】
行動チャートができたら、家族に見せながら下記を話し合います。
・行動ができたら表の空欄にシールを張ったり、しるしをつけたりすること
・一週間の終わりに幾つできたか、を振り返ること

振り返りを楽しめるようにご褒美(目標)を決めるとよいでしょう。ご褒美は、一緒に絵本を見たり遊んだりする時間(スペシャルタイム)のようなものや、週末のおやつが増えるといった、決して高価なものを与えるようなことにならないようにします。

行動チャートはよく見える場所に貼り、子どもと一緒に進められるようにします。しかし、シールやできることが目的ではなく、ほめることを忘れないようにすることが本来の目的ですので「もう少しでシール貼れたのになぁ」「できてないね〜」など、できなかったことへの注目は避けましょう。できなかった時は空欄にして、できた行動に注目をしていきます。もしも、子どもが空欄にシールを欲しがったら、「明日もチャンスはあるからね」と肯定的に言葉を返すようにし、できている行動に注目していきます。大事なことは、ほめられることで子どもが好ましい行動を一つ一つ、こなしていけるようになることです。

柳下記子
視覚発達支援センター 学習支援室室長

 

──■ あとがき
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今回は年内最後のメルマガになります。虐待というやや暗いテーマでのしめくくりとなりましたこと、お詫びします。ただ、できるだけ早く知っておいていただきたい内容の講演でしたので、連載のはざまに掲載させていただきました。

来年も、場面緘黙や当事者の方の方からの連載など、多彩な内容を企画しています。引き続きご愛読いただければと思います。

次回は1週間のお休みをいただいて、1月15日(金)を予定しています。
読者の方々がよいお年をお迎えになることを願っております。
今年1年、ありがとうございました!