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きこえの困りの評価と改善のメカニズム(最終回)

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■ 連載:きこえの困りの評価と改善のメカニズム(最終回)
■ グッズ:《読む》《書く》に特化したワークブック・1
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■ 連載:聴覚認知の仕組みと聴覚認知バランサーの活用のしかた
第7回 きこえの困りの評価と改善のメカニズム(最終回)
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最終回となる今回は、お子さんのきこえの困りを聴覚認知バランサーを通じてどのように評価するか、さらにそうしたきこえの困りをタスクの繰り返しを通じ改善させていくメカニズムについてお話ししてみたいと思います。

まず、お子さんの使用の場合、バランサーをひらがな表示モードにする必要があります。年齢を正確に入力すると自動的に表示モードはひらがなに変わりますが、一般設定画面から漢字仮名交じり表示モードかひらがな表記モードに指定することもできます。ひらがなの読みができる年齢以上のお子さまについて、評価とトレーニングをしていくソフトウェアであることもご承知おきください。

○ことばの獲得プロセスについて
以前のメルマガですでに解説した内容となりますが、いま一度ことばの獲得プロセスについておさらいしておきます。

ことばの獲得のためには、まず、音素カテゴリー知覚、音韻カテゴリー知覚という2種類の引き出しが脳内に形成される必要があります。胎児から3歳くらいまでの期間に、もっぱら母親の音声言語をひな形にそうしたカテゴリーが形成されます。ひとつめは、日本語の獲得の基本となるアイウエオ、つまり50音に対応できるカテゴリー知覚のための引き出しで、もう一つは、ことばに隠されている隠喩とか暗喩と呼ばれる、感情的な表現を知覚するための引き出しです。

ここで注意しなければならないのは、実際の日本語のアイウエオの引き出しに、50個の引き出しがあるわけではないことです。例えば「バ」「ダ」「ガ」といった鼻濁音は、聴覚だけで明瞭に区別するのがとても難しいのです。ではどうやって聞き分けているかと言うと「目」で区別しているのです。耳だけでなく、目と心を使って聴き分けているのです。音だけで判断しがたい時には、脳によるトップダウンで「きっとそれは バ に違いない。」なんて判断しているわけなのです。

50音の引き出しと言いますが、実際には個人差があり、普通の人なら30〜40個くらいしかありません。まずは、そうした引き出しをできるだけ50個に近づけることがことばの学習能力を高める上で必要です。環境さえ整えば日本語耳プラス英語耳といったバイリンガル並みの、80個以上聞き分けできる耳に育てることも可能です。※

編者注)中川先生からの伝言です。「もし多くの読者のみなさんがほしいといわれるなら、いずれ英語認知バランサーなんてものの作成にもぜひ取り組んでみたいと思っています」とのことです。ご要望のある方は編集部にその思いをお伝えいただければ幸いです。

音素カテゴリー知覚と音韻カテゴリー知覚の獲得は、およそ3〜6歳くらいまでに仕上がってしまうようです。それ以降は戦略的に言語学習を重ねない限り、地方出身者がお国言葉のなまりをなかなか解消できないのと同じように、音韻カテゴリーの表出をネイティブばりにするのはかなり難しい状況になっていきます。それは、最初に出来上がってしまった音素カテゴリーや音韻カテゴリーを活用して、新しいことばを表現してしまうためです。雑音下での聞き取りや語頭や語尾を言い当てる訓練を通じて、聞き取りが苦手な音素についてそれを区別する習慣を形成していくことで、引き出しの数を増やすことができます。

小中学校の現場にいる教師の方々は、音素カテゴリー知覚や音韻カテゴリー知覚の形成ということに関して概して無頓着な方が多いようです。構造論とか生成論的な獲得の前に、生活や文化に寄って形成される上述のカテゴリー知覚の形成が大事なのですが、言語教育というとひたすら語彙の獲得を高める作業と信じて、詰め込み学習を指導してしまっています。きこえのつまずきの対応には、音素カテゴリー知覚や音韻カテゴリー知覚を深めることが実際にはより重要なことなのです。

現在の聴覚認知バランサーは、基本的に音素カテゴリー知覚の訓練にフォーカスをおいたタスクしか搭載されていません。今後、アドオン・オプションとして情感豊かな音声で、うれしい声かなしい声とか喜怒哀楽のカテゴリーを知覚するためのタスクや発音のセルフチェック機能も搭載していきたいと考えています。標準語版、大阪弁版などのメタファー理解や自分の発音リズムとネイティブとの抑揚の違いを、リアルタイムに音声波形から視覚的に学習するタスクなども用意できたらと思います。

脳内に処理資源としてのたくさんのボキャブラリーがあれば、多少は音素が聞き分けできなくてもなんとかなるのは事実ですが、基本となるカテゴリー知覚を抑えておけば、語彙獲得の努力を辛くないものにしてくれます。ですからつまずきがある時は、ぜひともまず最初にそこに戻るべきだと私は考えています。

ことばや文章のひな型が脳内にあるからこそ、耳に断片的にしか音が届いていなくても相手の言いたいことばを理解(想像?妄想?)できるのです。脳が正しく処理するには基本的な語彙力が必要であり、その骨格となる音素カテゴリーがとても重要なのです。

音素列が聞き取れただけでは意味が分かっているとは言えません。犬は動物、マグロは魚、といったふうに意味カテゴリーによってことばを区別する力も必要です。聞くという行為は、脳内で様々に並列情報処理をしていて、その最終形から、犬は動物という結論を得るのです。単語の発音だけが聞こえても意味カテゴリーを即座に判断することができなければ、よどみない聴覚コミュニケーションはさっぱり成立しなくなってしまいます(聴覚情報処理障害APDは、音韻メタファーの理解や意味カテゴリー知覚のエラーが深く関わっています)。

例えば「ラクダ」ということばがその場面で話題になっていても、周りが騒々しくて一つひとつの単音が正確に聞き取れず、ましてや話の流れも分からないということになれば、先ほどお話ししたような「バ」「ダ」「ガ」の法則(マガーク効果)が生じてしまい「落馬(らくば)」と思ってしまうかもしれません。また「らくがき?」なんてトンチンカンな答えをしてしまい、友人からKYなやつと思われてしまうかもしれません。

聞こえたままに聞くというボトムアップ処理さえしっかりしていれば大丈夫というような、極端な例として補聴器があれば聞こえるはず、なんて考え方は、聴覚認知に対する理解のない、とても傲慢な見解に思えてきます。われわれは、ややもすると聴こえたようにしか聞いていません。例えば、へんくつな年寄りが都合の良いことしか聞こえないとか、知っていることばに置き換えてひとり合点するとか、といった例です。音韻カテゴリー知覚や意味カテゴリー知覚が正常ならば、音素の聞き取りがうまくいかなくてもそうした不都合はなかなか顕在化しません。だから学校でひたすら語彙力を高めることばかりにエネルギーを注いでいることについて私は腕組みしてしまいます。

さて、聴覚認知バランサーには、新密度の高い語彙がタスクの語として採用されています。親密度とはなじみやすさの度合いのことで、その数字が大きいほどに日常的に利用されているなじみのあることばです。東北大学とNTTの研究者が長い年数をかけて、ことばに親密度というカテゴリーを設け、それを定量的に取り扱えるようにしてくれました。親密度のとても高いことばとは、お子さんでも知っておかなければならない生活上必要なことばということができるでしょう。そうした親密度の高いことばは、周りが少しぐらい騒がしくて断片的にしか音韻を認識できない時にも、脳がまず最初に想起することばです。例えばアイウエオの音素を即座に区別できるように、単語レベルで即座に理解できることばです。ですから単語ジャッジとかカテゴライズというタスクは、意味カテゴリーを見ているものではあるのですが、親密度の高いことばを、音素のように素早く取り扱える能力を測っているということができるでしょう。

きこえたことばを手がかりに、その意味カテゴリーを文字情報から判断して画面をタッチして正答するには、聴覚皮質、視覚皮質、運動皮質の連携が必要です。タスク中に周囲にノイズがあっても、それに撹乱(かくらん)されない前頭皮質の働きも関わってきます。ですから、単語ジャッジやカテゴライズといったタスクをリズミカルに行えることは、脳機能が全般的に優れていること、集中力・注意保持力が高いことを意味します。

聴覚認知バランサーの結果の指数は、正答率だけでなく回答できるまでの所用時間も勘案したスコアで表示されています。耳からの学習でことばを覚えるという行為は、いつも五感を総動員し、感情や自分にしか説明できないような体験(ものがたり)にひも付けされていることがとても大切なのです。私は、単語ジャッジやカテゴライズというタスクを繰り返すうちに、知らず知らずそうした五感の相互作用が育っていくことが期待できると考えています。

インザクラウドでの聞き取りは、ことばの全体を聞かなくてもその一部の情報から正しいことばの引き出しにたどり着ける能力を開く訓練につながりますし、両耳聴能力をいかに活用するかの訓練にもつながります。

最後に「色あて」というタスクのことについて紹介しておきましょう。このタスクは、視覚と聴覚での情報処理に競合が生じた時の、脳内処理過程を推察するモードと言い換えることができるかもしれません。例えば「赤と文字で書いてありますか」と問われた時、「赤い文字」で「きいろ」の文字を提示すると、言語性よりも感性が先行する人の場合、文字の色につられて「はい」と答えてしまいます。アスペルガー症候群など発達障害の傾向があるお子さんはこうしたタスクが苦手です。しかし、タスクを繰り返すことで、そうしたカテゴリー分けをする場面があることを学ぶことができ、そうした早とちりをしない、しっかりと見て読んで考える習慣を身につけることができます。体調や周囲の雑音の度合いでもこうしたタスクの結果は日々変化しますから、一喜一憂ではなくタスクを繰り返しながらスコアアップを目指すのが大切です。

都合7回にわたって聴覚認知バランサーの活用法について解説してきました。
それぞれの回では、まず、きこえの困りに関する解説を行い、そして聴覚認知バランサーが何を目的としているか、さらにはどんな活用法があるかについて解説させていただきました。メルマガという図表や写真を組み込めない環境の中で、できるだけ平易に文字情報として提供する形になってしまい、いささか分かりにくい部分があったかもしれません。またそれぞれの回で一話完結となるように心がけたため、毎回きちんと読んでいただいた方には内容が重複したところがあり、いささか冗長となってしまいましたことをお詫びします。いずれ、バランサーシリーズのガイド本として、この7回のメルマガも図表つきで、さらにはブラッシュアップしてリライトされた形でリリースされることと思います。

最後になりますが、このような解説の機会をくださったLEDEX様に謝辞を申し上げて本連載をおしまいにしたいと思います。

中川雅文・国際医療福祉大学教授
国際医療福祉大学病院耳鼻咽喉科部長

◯参考図書 中川雅文著 耳と脳 臨床聴覚コミュニケーション学試論
医歯薬出版 2015 (詳細はこちら>>

 

■ グッズ:《読む》《書く》に特化したワークブック・1
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わが家の小3の娘は算数が大好きで、国語の長文読解の記述問題と作文が苦手です。最近は、複雑な話をしようとしてはそれをうまく構成できずに、口ごもったり、うまく話せないことに癇癪を起こしたりすることが増えてきました。

低学年の頃に比べてより複雑なことを考え表現したくなり、インプットとアウトプットのバランスが崩れてきているのかな・・・と思います。こんな状態は幼稚園の年長の時期にもありました。

今回は、そんな小学生にぴったりの《読む》《書く》に特化したワークブックを、2回に分けてご紹介いたします。

まず1冊目に、読解に軸をおいたワークブックとして、論理エンジンの「読解・作文トレーニング 読む力・書く力をぐんぐんのばす(小学生版)」をとりあげます。

・読解ワークブック(写真の左側 画像はこちら>>

論理エンジン・シリーズ開発者の出口汪(でぐちひろし)先生は、第1章の冒頭でこのように述べています。

「まず、ひとつの文章を正確に理解することから始めましょう。実は、たった一つの文であっても、規則に従ってできているのですよ。どんなに長い文章でも、一つの文が集まったものですから、一つ一つの文がわからなければ、まとまった文章を正確に読むことはできません。」

このワークブックは、本文の中から主語と述語を探し、装飾語との関係を模式図で書かせるところから始まります。

文章の読解が苦手な人は、一つの文章の「主語と述語をつかみきれていない」ことがその背景にあって、話しことばや作文も同様に、「主語と述語に気を配れない」から破綻してしまう。そういう視点から出発しているワークです。

文の構造を論理的に分解していくやり方は、算数好きの子どもには合っているようです。ここまで精確に分解しないと理解できないのかと唖然とする部分もありますが、やればやっただけ文章が読みとれるようになるので、本人は手ごたえを感じている様子です。

各章で選ばれている課題文も魅力のひとつです。第1章では新美南吉の「赤とんぼ」、第2章では宮沢賢治の「よだかの星」といった具合に、課題を通して、日本を代表する作家たちの文学にも親しむことができます。

小学生向けの論理エンジンは、緑色と水色の2種類あります。緑色の方がベーシックで有名ですが、同じ学年のワークブックで比べた時、構造理解や表現によりダイレクトにつながるのは水色の「読解・作文トレーニング—読む力・書く力をぐんぐんのばす」でしょう。

「空気を読む」「空気を読めない」という表現があります。「読める」とされている子であっても、空気を読むためのノウハウを生活の中で必死に構築し続けていることがあります。わたしの娘も、ヘトヘトになりながら世の中に自分をフィットさせるためのルールブックを、日々更新させているように見えます。

論理エンジンのシリーズは、ものごとを「読み解く」場面でのルールを、より明確にしたいタイプの人の助けになると思います。

次回は、《書く》に特化したワークブックをご紹介します。

○考える力をつける論理エンジン(各種) 出口汪著、水王舎
詳しくは→ 論理エンジン公式サイト(サイトはこちら>>

レヴュアー: yoshiko

 

■ あとがき
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今日は神戸の日本認知症予防学会に来ています。
それぞれ別のものと考えられてきた発達障害や高次脳機能障害(交通事故等の後遺症)から認知症まで共通する部分があります。最近ではそれらを横断的に研究することで、症例やデータを増やし、新しい知見が見つかりつつあるように思います。

・第5回日本認知症予防学会学術集会 (詳細はこちら>>

国際福祉機器展(HCR)などの展示会、日本LD学会などの学会が続く関係で、次回メルマガは、通常より1週間先の10月16日(金)とさせていただきます。

・第42回国際福祉機器展(H.C.R.2015)(詳細はこちら>>
・第24回日本LD学会 (詳細はこちら>>