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僕は 僕の道を行く!

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■ 連載:「僕は 僕の道を行く!」
■ 連載:情報入手の手段・1:視覚認知メカニズム
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■ 連載:子どもたちの夢や願いを支える
第2回:「僕は 僕の道を行く!」
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前回に引き続き、施設併設の肢体不自由の学校で出会った生徒(男子)の紹介をします。医療型障害児入所施設で12年間過ごし、併設の学校に通って卒業後は、他県にある自立生活支援を行う施設に入りました。そして4年後の今、他県で一人暮らしを始めたBさんの紹介をしたいと思います。

三重は南北に長い県です。Bさんは南の港町に生まれました。目の前は海、地震がきたら津波が押し寄せる地域です。地域の福祉環境は今でこそ整ってきましたが、Bさんが就学する時は、遠く離れた医療型障害児入所施設に入所し、併設する学校に通うという選択が本人にとって望ましいと考えられたのだと思います。

Bさんは、脳性麻痺のため、上下肢に麻痺があり、食事・排泄・着替えなど生活の全般で支援が必要でした。知的障害はなく、準ずる課程(小学校・中学校・高等学校に準ずる教育という意味。一般の教科書を使って学習)で学習をしてきました。

*医療型障害児入所施設:医療型障害児入所施設(主として肢体不自由)の利用を必要とする18歳未満の子どもを対象としている。医療だけでなく日常生活指導も行う。入所期間は様々。

併設するリハビリテーションセンターでの生活は、18才の誕生日までしかできません。高等部になり、卒業後の生活をどうしたらいいのか悩みながらも、将来のことを考える生活が始まりました

私たち教員は、教科学習と体験学習を車の両輪ととらえながら、様々な経験を積み重ねることで、Bさんが自分で考え、自分で選択し、決定する・・・将来の進路選択ができることを目指しました。

Bさん自身は、施設併設での生活環境はバリアフリーで、支援者も多い環境であると自覚していました。社会に出て生活するとどういうことが生じてくるのか、現実を見ながら自分の課題を見つめることや、自分でもできるという自己効力感を育み、自信をもてるように支援することが必要でした。

今回は、Bさんがどのような経験を積み、卒業後の生活につなげていったのか、キーになったことをご紹介したいと思います。

【自分でもできる! 月に1回の校外学習で現実体験する】
毎月月末に公共交通機関を使って、市内の公共施設や飲食店を利用する校外活動を実施しました。何時のバスに乗るためにはどれくらい前に準備をしておくべきか、必要な持ち物は何か、などをシミュレーションしながら計画を立て、リフトバスの依頼も自分で行いました。昼食場所やトイレの依頼についても、現実の体験の中で学んでいきました。

「介助を要していた食事も親子丼なら自分で食べることができるし、飲み物にはストローを入れてもらおう!」
Bさんが一人で体験する場面を 教員は離れた場所から見守る役割でした。

昼食場所として選んだお店に勇気を出して一人で入り、親子丼を注文し、食べ終わって出てきた時は、やり遂げた感でいっぱいの笑みでした。昼食より数倍、勇気が必要であったことは、トイレの介助依頼でした。しかし、回を重ねる中で、その時出会った人に介助の手順法が書かれた指示書を見せ依頼することができました。思春期のBさんにとって恥ずかしさもあったと思うのですが、将来の生活を想定しながら、昼食時やトイレ介助の克服は今後の生活にとってなくてならないものでした。「駅員さんや役所の人や警察官などに依頼すると断られにくい」と、上手に頼めるようになっていました。このように一人で外出した時に必要なことを実際に体験し、失敗を活かしながら自信につなげていくことができました。

【人が持っていない資格をとろう!】
情報や国語、英語の授業などで、ワープロ検定や漢字検定、英語検定に取り組む生徒は多いと思います。Bさんも上肢に麻痺があるもののキーボードを利き手の指先で打ちながら検定にチャレンジしていました。スピードも求められる検定試験では、時間的な配慮や問題を拡大するなど、検定協会にできる限りの配慮を要請しながら進めました。

Bさんはさらに上記の検定でだけでなく、言葉づかい・話し方・態度・振る舞いなど現実の社会などで求められる資質などに加え、一般知識やマナー、接遇などが学べる秘書検定に挑戦しました。特別支援学校の生徒が持っていないだろうと思われる資格を習得し、ここまで自分は挑戦したということを自分のアピールにしたいと考えたのです。

半年間ほど問題集を繰り返し行い、検定前には放課後に補修もしました。社会に出た時に、役立つ知識が得られる実感も後押ししたようです。3年生の卒業式前にその合格証書が届き、顔写真入りの合格証明書をもつ姿は誇らしげで、社会に出る際の勇気にもなったようです。
*公益財団法人 実務技能検定協会 (詳細はこちら>>

【実際に働くってどんなこと?】
生活全般に支援のいるBさんの現場実習先は、従来では生活介護の施設や事業所になることが多く、地域に戻って現場実習をするのが原則でした。昼食やトイレの支援をしてもらいながら、働くとはどういうことかを知るための現場実習をどこに依頼したらいいのか、社会資源の少ないBさんの地域の、市役所に何度も出向きながら調整しました。その結果、地域の大きな病院での受付作業と、社会福祉協議会での事務作業をさせてもらえることになりました。

実際に働いている人の姿を見ることは卒業後の生活をイメージすることにもなり、いろいろな刺激を得ることができました。また、地域の方でもBさんの存在を知ることで、障害者への理解啓発となったのではないかと考えます。
*Bさんの様子 (画像はこちら>>

【当たり前に生活するってどんなこと?一人暮らし体験をする!】
月に一度の校外学習で、自分で計画して行動できる力はついてきたものの、将来一人暮らしをすることへのイメージはなかなか持てないBさんでした。生活全般に支援がいる自分は、施設を出てどのように暮らしていくのか自信が持てなかったのです。

そのような中で、県の委託で(その当時、現在は市町村が主体)自立生活を目指す、障害のある人に対してヘルパーなどを使って自立生活を体験できる「自立生活体験室」があるという情報を、市内のNPO法人から得ました。そこで、Bさんを含む高等部の生徒たちに勧めることにしました。

障害のある人たちの多くは家族と、あるいは病院や施設で暮らします。その場合、生活の決定権は自分になく、親や医師、福祉関係者が持っていることが多くBさんも、自分には無理かもしれないとあきらめたり、できないと思ったりしていました。この自立生活体験室はそんなBさんに、自分らしく当たり前の生活を体験させてくれた場所になりました。公共交通機関の利用や買い物や調理などヘルパーさんと一緒に、自分で選ぶことや自分で決めること、それらを自分の責任で行う自己責任についても学ぶ場となりました。この事業を委託されているピアサポートみえは、Bさんが地域に戻った時に、頼ることができる場にもなったのです。
*NPO法人ピアサポートみえ (詳細はこちら>>
*全国自立体験室一覧 (詳細はこちら>>

【自分の車椅子は 自分で決める!】
リハビリテーションセンターで生活し、医療的なケアをうけるBさんは高等部入学前に電動車椅子を作りました。そのため移動では友達や教員、職員に「○○に連れて行って」と毎回頼むことなく施設内を自由に移動でき、行動範囲が広がったことで積極的な行動ができるようになっていました。しかし現状の車椅子ではなかなか体幹が維持できず、身体が傾斜しがちでした。

卒業までに多くの生徒は、新しい車椅子を作成します。車椅子は、これからのBさんの生活にとってなくてはならないもので、身体の一部として、快適に使用できるものが必要です。シーティング※1で体幹が維持できないかと考え、学校でシーティングセミナーを行い 実際にBさん自身がそれを体験する場を設定することにしました。

※1 シーティング:車いす上で正しい姿勢をとる技術
アクセスインターナショナルの解説ページ (詳細はこちら>>

Bさんが実際にシーティングされた車椅子に乗った時に、体幹がまっすぐになり維持できた時の感覚は「あれ?違う!」という感覚だったようです。しかし、自分で車椅子を選択するまでは紆余曲折しました。整形の医師が勧めるものと、自分が乗りたいと考える車椅子は違ったのです。今まで、自分でいろいろな選択をして、決定する経験が乏しかったBさんの大きな岐路であったのがこの車椅子選択でした。医師が勧める車椅子に対して、自分の意見がなかなか言えなかったのです。私たち教員ができることは、ケース会で資料を作成し、卒業後の生活を支えるために必要なことを伝える中で、こういう車椅子ではどうかという提案をすることまでです。通常は、生活するリハビリテーションセンターの医師が決めるのが今までの流れでした。なかなか自分の思いが伝えられず悶々としているうちに、行政まで必要な書類がいっていました。勧められる車椅子の作成に、自分の身体に合わせて型をとるその瞬間、Bさんは絞り出すように「この車椅子はいやだ」と言えたのです。
車椅子はとっても大きな存在です。Bさんは、その後リハビリテーションセンターの医師の理解もあり、書類を出し直し、自分が希望する車椅子を作成することができました。

車椅子シーティングセミナーに参加して、自分に合う車椅子を自分で実感できていたからこそ、自分の車椅子を自分で決めることができたように思います。車椅子は、いろいろなものがあります。何がいいのか、狭い選択肢の範囲から選ぶのではなく、いろいろな考えを聞きながら試し、本人が快適だと実感するものが一番いいのかもしれません。そういう場面をつなげることも私たちの使命のような気がします。

*参考文献 「運命じゃない」シーティングでかわる子どもたちの未来 (詳細はこちら>>

*日本車椅子シーティング協会 (詳細はこちら>>

今回はBさんが卒業までに学校でどのような経験をしてきたのかをお伝えしました。できる・できないで考えると、つながらない子どもの未来があります。また、学校だけでは完結しないことが、地域の中で活用できる様々な資源や機関と連携していくことで可能になる場合があります。Bさんの進路選択への指導と支援を通して、私たち教員も多くの人との出会いに支えられていると教えられました。

次回は、卒業後の生活へのつながりと、Bさんの生活を支えるために関係者が活用したツールをご紹介したいと思います。

逵直美・東京都立光明特別支援学校教諭
前三重大学教育学部附属特別支援学校

 

■ 認知機能の発達、学びとその支援
第3回:情報入手の手段・1:視覚認知メカニズム
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触覚や嗅覚、味覚、内臓感覚など、外界の情報を入手する手段は多いですが視覚と聴覚を合わせると、得られる情報は90%以上といわれています。ただし、目や耳に入ってきた情報が意味あるものとして認識されるには、眼や耳、脳の様々な部位の働きが必要とされます。逆に言えば、例えば、読みの困りといっても、異なる部位(あるいは複数の部位)に問題がある可能性があり、それが特定できないと、支援する方法が見つからないことになります。

今回は視覚認知について、次回は聴覚認知について、たくさんの専門家の話を聞いた立場として、筆者なりに理解した内容をお伝えしようと思います。

まず、学習障害の困りのひとつ「読み」に関して、ざっくりとその流れとそれに関連している身体の部位を挙げてみます。

1.文字情報への眼球運動(筋肉)

2.文字表象の光データの受信(レンズと網膜)

3.受信データの解釈(鏡文字の変換)

4.文字表象としての認識

5.文字表象のつながり解析と語彙辞書

6.意味理解(イディオム、文章の意味理解)

1.文字情報への眼球運動(筋肉)
情報を得るためには、眼をその方向に向けなければなりません。眼球はそれぞれ6つの筋肉(眼筋※1)で制御されます。黒板に眼を向ける際にも、縦書きの本を読む、横書きの本を読む際にも、それぞれ異なる筋肉が使われますので、不得意な眼の動きがある場合があります。筋肉は鍛えられますので、ビジョントレーニングが有効になります。
※1 眼筋 Wiki (詳細はこちら>>

2.文字表象の光データの受信(レンズと網膜)
小学校の理科の時間、レンズを使った像の実験を思い出してください。レンズの位置を動かすと像がはっきり映ったり、ぼやけたりしましたね。眼も似た仕組みで、レンズの位置を動かす代わりに、水晶体でできているレンズの厚さを変えて、像を感知する網膜の位置に正しく像ができるようにしています。レンズの調整がうまくできないのが近視や遠視で、像が網膜の手前にできる症状(近視)や、奥にできる症状(遠視)を、別のレンズを使って矯正しないと、情報が不鮮明になってしまいます。

3.受信データの解釈(鏡文字の変換)
レンズの実験でできる像は、上下左右が実際とは逆になっていましたね。眼も同じで、できる像自体は上下左右が逆(鏡像)で、それを変換して、実物と同じように認識するのは脳の働きです。小さい子が絵を描く時に、左右が反対に描く場合がありますが、それは、脳の機能が発達する途中だからだそうです。読みの困りの1つのタイプに、文字を読むのに時間がかかるというものがありますが、「さ」と「ち」は左右が対称、といえば、文字の区別に時間がかかっている原因が想像できませんか?

4.文字表象としての認識
手書き文字は、形や大きさがまったく同じものはないといってよいと思います。ですから、子どもがひらがなを読めるようになるには大変時間がかかります。多くの大人は「あ」を”あ”として読めますが、実はとても高度な判定を、脳がしているから読める訳です。その機能の発達がゆっくりだと、やっぱり文字を読むのに時間がかかることになります。

5.文字表象のつながり解析と語彙辞書
いくつかの文字はまとまって、言葉(単語)になります。漢字交じりだと比較的に区切りが分かりやすいですが、ひらがなばかりの文を読む場合は、区切る場所を見つけるのに時間がかかりますね。また、単語をどれだけ知っているか(語彙辞書)も読む時間や理解の度合いを左右することになります。
読む困りを持っていると、つながり解析の回数も、語彙の獲得もゆっくりになりますので、ますます読むのに時間がかかることになります。

6.意味理解(イディオム、文章の意味理解)
ここまで来れば、読みもかなりの水準になります。英語の勉強を思い出してください。文法だけが分かっても、また、単語だけを覚えても、英語はすらすらと読めません。たくさんの文章を読んで、さまざまなパターンに接することが、文章理解の深度や読む速さを改善するのに必要になります。いろいろな読みの困りを持っていると、文章を読む回数も減りがちになりますから他の人とさらに差がついてしまいます。

以上は、正しい説明というよりも、文字を読むということに様々な要素が含まれていることを知っていただくために書かせていただきました。この他に注意や記憶(ワーキングメモリ)などたくさんの認知機能が読むために必要になります。さらに、「書く」には、手指を動かすという認知機能も求められます。より詳しくは、数号前のメルマガの、川端秀仁先生の連載にあたっていただければと思います。

ここで言いたかったことは、学習障害には様々なタイプがあること、その原因を突き止め、それを改善する手立てをとることが必要だということです。
そのために開発したのが、ビジョントレーニングIIと視覚認知バランサーであることを知っていただければと思います。

(五藤博義)

 

■ あとがき
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ついこの間まで、ストーブの石油を買いたそうかどうか迷っていたのがうそのように、東京では真夏日続きとなりました。読者の皆様も熱中症には十分お気をつけください。

次回のメルマガは6月12日(金)の予定です。