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目と手の運動協応:字がマス目におさまらない

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■ 連載:目と手の運動協応:字がマス目におさまらない
■ 映画:ぼくはうみがみたくなりました
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■ 連載:「見る」機能と学習 第5回
目と手の運動協応:字がマス目におさまらない
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※編者注:専門用語を使わないと分かりにくい文になることから、川端先生に解説をお願いし、後半の部分にまとめて掲載しております

1.D君 8歳(小学3年生)の受診時の状態

D君は筆圧が弱く、何度も練習しますが字が上手に書けません。ノートのマス目に文字が入らず、マス目から文字が大きくはみ出します。行もそろわずバラバラです。また、線に沿って紙をはさみで切ることも苦手です。体全体を使った動きや、縄跳びや鉄棒も苦手です。見え方に何か問題があるかもしれないということで視覚発達支援センターを受診されました。

図1 D君の書字 ”え”と”れ”
(★図はこちら>>

弱度の遠視性乱視ですが、視力や、基本的な眼の動きに問題はありません。また基礎図形の模写検査でも、基本構造は理解できていました。しかし、線たどり課題では基本の黒線から大きくぶれてしまい、点結び課題でも始点から正しく始まらず途中の線もずれてしまいます。また、左右の概念が未獲得で、原始反射も強く残っていました。

図2 D君の線たどり図
(★図はこちら>>

2.経緯

D君の問題は、手先の不器用さと目と手の協応、身体バランスの不良にあると判断し、いくつかのトレーニングを紹介しました。モロ反射が抑制されないで残っていることに起因すると思われる連動運動解除の練習について指導し、目と手の協応と手先の巧緻性を改善するためのトレーニングを行いました。また、本人が取り組みやすいように、ペンシルグリップを使用してもらいました。

3か月間継続して取り組んだとところ、原始反射は見られなくなりました。
また、点結び課題ではまだ完全とは云えませんが、文字は大分上手に書けるようになってきました。

図3 D君のトレーニング後の書字 ”歩”と”つ”
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3.見立てとそれへの対応

●粗大運動や書字等の微細運動の不器用さ

身体・精神の発達で脳性麻痺や精神発達遅滞などの障害が認められないことから、D君は軽度の発達性協調運動障害をもつと考えられます。

【参考】DSM-IV-TRの発達性協調運動障害の診断基準
A. 運動の協調が必要な日常の活動における行為が、その人の生活年齢や測定された知能に応じて期待されるものより十分に下手である。これは運動発達の里程標※1の著明な遅れ(例:歩くこと、這うこと、座ること)、物を 落とすこと、”不器用”、スポーツが下手、書字が下手、などで明らかになるかもしれない。
B. 基準Aの障害が学業成績や日常の活動を著明に妨害している。
C. この障害は一般身体疾患(例:脳性麻痺※2、片麻痺※3、筋ジストロフィー※4) によるものではなく、広汎性発達障害の基準を満たすものでもない。
D. 精神遅滞が存在する場合、運動の困難は通常それに伴うものより過剰である。

●原始反射が抑制されないで残っていることの問題

原始反射※5は脳幹主導の自動的、ステレオタイプな反応で生後数か月の新生児の生存に不可欠ですが、やがて役割を終え生後6か月から12か月の間で中枢神経系の高等領域の発達とともに次第に制御、抑制されていきます。

中枢系の発達に問題があり、原始反射が抑制されないで残っていることが、不器用さや落ち着きのなさの原因となっていることもあります。一般的な期間を超えた原始反射の残存は、姿勢反射の確立をはじめとする中枢神経系の発達に悪影響を及ぼします。これは視覚システムにおいても例外ではありません。

以下の4つの原始反射は、円滑な眼球運動、眼手の協応、左右感覚、空間感覚などの視覚機能の発達に大きく影響するといわれています。

(1) 非対称性緊張性頚反射 ※6
(2) 緊張性迷路反射 ※7
(3) 対称性緊張性頚反射 ※8
(4) モロ反射 ※9

こうした反射の残存が認められる場合、粗大運動 ※10などを行い、前庭機能※11や、目と手、目と体の協調運動の向上を図り視機能に関する不具合の改善を指導します。

●モロ反射が残っていることのチェックと改善の為のトレーニング
つま先を開いた状態で前進・後退する。歩行中に手のひらが前方を向くようであれば反射が残存しています。(図4)かかとを開いた状態で前進・後退する。歩行中に手のひらが後方を向くようであれば反射が残存しています。
ひどい場合は体が傾斜し、腕の屈曲具合も変わってきます。(図5)

図4(左)と図5(右)
(★図はこちら>>
改善トレーニングは、前述の足と手のひらの関係を逆(”つま先を開いた状態で手のひらを後方に向ける”、”かかとを開いた状態で手のひらを前方に向ける”)状態で前進・後退したり、ジャンプしたりを行います。

●手先の巧緻性を改善するためのトレーニング: ○×レース
手先の巧緻性を改善するためのトレーニングで、目で見た通りに手先を動かし、細かな運筆もスムーズに行うことを目的としています。角を意識して書くことが苦手な子や字を枠からはみ出て書いたり、曲線が苦手な子を対象に実施します。

○と×がランダムに書かれた紙を準備し、○のときには上、×のときには下に線を書き、一列つなげて書くように指導します。
上下や隣の記号に重ならないように書けているか、大きくぶれずに記号ぎりぎりに線が書けているかをチェックします。

図6 ○×レースの用紙イメージ
(★図はこちら>>

●解説

※1 運動発達の里程標
子どもがその年齢で標準的にできていると考えられる運動機能。
我が国では、乳幼児では、遠城寺式・乳幼児分析的発達検査表が用いられている。最近では、日本小児保健学会の改訂日本版デンバー式発達スクリーニング検査が用いられるようになっている。
たとえば代表的な粗大運動の90%通過率(90%の子どもができるようになる)の時期は
(1)首のすわり:3〜4か月
(2)支えなしに座る:6〜7か月
(3)つかまって立っていられる:8〜9か月
(4)つかまって立ち上がる:9〜10か月
(5)つたい歩き:10〜11か月
(6)一人でじょうずに立っていられる:12〜13か月
(7)上手に歩く:13〜14か月
(8)後ずさり歩き:17〜19か月
(9)階段を登る:21〜23か月
(10)三輪車をこぐ:36〜39か月
(11)片足とび:45〜48か月
など

※2脳性麻痺
受精から生後4週までの間に、何らかの原因で受けた脳の損傷によって引き起こされる運動機能の障害をさす症候群。

※3片麻痺
上肢および下肢の、左右どちらかの側だけが麻痺した状態。大脳皮質から頸髄(けいずい)までの障害によって生じる。半身不随の状態。

※4 筋ジストロフィー
筋線維の破壊・変性(筋壊死)と再生を繰り返しながら、次第に筋萎縮と筋力低下が進行していく遺伝性筋疾患の総称。

※5 原始反射
胎内で発生する生命維持に関連する反射で脳幹や脊髄が担う。ものを握る、おっぱいを吸うなど。生後2か月頃から脳の発達に伴い、別の部位に制御が移ることで、だんだんと消失する。

※6 非対称性緊張性頚反射
乳児を仰向けに寝かせ首を右に向けると、右の手足は伸び、左の手足は曲がる反射。逆に首を左にむけると、左の手足が伸び、右の手足は曲がる。発達に伴い、生後4か月を過ぎた頃からみられなくなる。手の届く範囲の空間感覚の発達に関係するとされる。

※7 緊張性迷路反射(tonic labyrinthine reflex ;TLR)
前方TLR:頭が前に傾くと全身と手足が屈曲する、後方TLR:反射と頭が後ろに反らされたときに全身と手足が伸びるという反射。つまり、頭を前に動かすと筋緊張度が低下し屈曲、頭を反らすと筋緊張度が増加し伸びる。
この筋緊張度の変化が固有受容覚を刺激することで、バランス感覚などが養われる。
前方TLRは受胎後12週間で発達し、生後3〜4か月で抑制される。

※8 対称性緊張性頚反射
赤ちゃんが四つばいになっているとき、頭が後ろに反ると腕が伸びて、脚が屈曲し、頭が前に向けられると腕が屈曲し、脚が伸びる反射。
生後6か月頃から発達し、11か月頃に見られなくなってくる。
乳児がはじめて重力に逆らう反応である。また遠見視および近見視の発達でも重要な役割を果たすとされる。

※9 モロ反射
乳児の頭を急に落とすように動かしたり、大きな音でびっくりさせたりすると、両腕を体から離すように上下に大きく開いた後で、ゆっくりと何かに抱きつくような動作をする。この一連の動きを「モロ反射」と呼ぶ。
生後4〜6か月ごろに抑制される。
モロ反射が抑制されていないと、光・音・触覚・味・温度に対して過剰反応し(感覚過敏)、集中力が続かない、疲れやすい、すぐイライラする、などの症状が出ることがある。

※10 粗大運動
粗大運動とは 手足胴の大きな運動のことで微細運動(手先の操作)と対になって使われる。

※11 前庭機能
身体各部の位置や身体のバランス(重力に対してまっすぐに立っているか傾いているか等)、身体の運動状態(方向や速度等)を感知する内耳の機能。

(川端秀仁・かわばた眼科院長)

 

■ 映画:ぼくはうみがみたくなりました
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海外では「レインマン」など発達障害をもつ人を描いた名作映画が多数あります。日本でも「ちづる」「DXな日々 美んちゃんの場合」などが発表されるようになってきましたが、その端緒になった映画は「音符と昆布」と並び、この映画が代表格です。

「音符と昆布」がある意味、創作であるのと異なり、こちらはご自分のお子さんをモデルにしてプロの脚本家が原案と脚本を書き下ろしただけに、自閉症のある青年の特徴をみごとに伝えています。

ストーリーの中で様々な人と接点をもつ主人公の振る舞いは、まだ、実際に自閉症の人と接したことのがない人には、とても興味深いと思います。

残念ながら、劇場で公開されることが少なくなってきましたが、上映権付のDVDが安価に販売されていますので、親の会などのイベントなどで活用されてはいかがでしょうか?

映画「ぼくはうみがみたくなりました」
企画・原作・脚本:山下久仁明、監督:福田是久、音楽:椎名邦仁
出演:大塚ちひろ、伊藤祐貴、大森暁美、秋野太作、他
製作:ぼくはうみがみたくなりました」製作実行委員会
2009年公開 同製作実行委員会
★詳細はこちら>>

 

■ あとがき
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助成金を受けて開発してきた聴覚認知バランサーの最終審査がようやく終わりました。これで商品化を行うことができます。それに先立ち、4月16日〜18日にインテックス大阪で開催されるバリアフリー2015で、聴覚認知バランサーWin/Macハイブリッド版とiPadアプリ、さらに病院や学校向けの聴覚認知バランサーProをお披露目します。
※バリアフリー2015のレデックスブースはこちら>>

また、4月19日(日)は京都で、子どもの発達・教育オープン研修会「認知と学びを支援する」と題して講演します。
※講演会案内はこちら>>

ご興味をお持ちの方はぜひご参加ください。

次回のメルマガは4月10日です。