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ワーキングメモリーと認知の構え

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■ 報告:日本LD学会レポート・3 ワーキングメモリーと認知の構え
■ 連載:言ってダメなら書いてみる
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■ 報告:日本LD学会レポート・3
−ワーキングメモリーと認知の構え−
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11月23日・24日に大阪で行われた日本LD学会全国大会レポートの第3弾です。
講演は、京都大学大学院教育学研究科・准教授の齊藤智先生です。

ワーキングメモリは注意欠如多動症 ADHD と関連しているとされていますがなかなか正確な意味が捉えにくい概念です。短期記憶と似ていますが、ポジティブな記憶という点で異なります。齊藤先生によれば、その概念を提唱した、アラン・バッデリー Alan Baddeley は以下のように述べています。「課題遂行中にその課題を遂行する目的で一時的に必要となる記憶の機能」

1.ワーキングメモリの定義と実行機能

まずは、ワーキングメモリとは何かをご理解いただくために、日本LD学会大会の発表論文集から、当該論文の冒頭部分を引用させていただきます。

「ワーキングメモリー(WM)は、日常のさまざまな作業や課題の遂行中に、一次的に必要となる情報を利用可能な状態で保持する働きを担っている。WMという用語は、そのような働き(機能)やその仕組み(メカニズム)、そしてそれらを支えている構造(システム)を指す。WMに保持されている情報は、(定義上)課題遂行中に必要とされるため、当該の課題遂行そのものからの妨害を受け、『きわめて忘却されやすい状態』にある。また、これらの情報は、課題遂行中には不可欠でありながら、課題が終了した時には、次の課題遂行に影響を与えないよう『消去される必要がある』。」

引用の中の2つの『』は、筆者が付け加えたものです。
『消去される必要がある』は、できごと記憶や手続き記憶、長期記憶など、多種類が存在する記憶とWMの違いを端的に表しています。他の記憶は、残存するかどうかはその人の状況にゆだねられている訳ですが、WMは ”次の課題遂行” のために、”消去されなければならない” のです。

さらに重要なのは『きわめて忘却されやすい状態』にあることです。齊藤先生はいくつかの調査研究で、様々な作業を被験者にさせ、その過程で「本来の目的を常に覚えているかどうか」が、その作業の結果の多寡に大きく影響を与えることを論じておられます。本来の目的、というと、WMとは異なると感じられるかもしれませんが、WMが「目的を遂行するために必要なデータの記憶」であれば、その目的そのものを常に念頭におき(オンメモリーといえるかもしれません)、そのために必要な処理方法を考えて、必要なデータを見つけ出し、実行していくことは、WMそのものであり、その最上位に位置することだと気づかされました。

※前述の “そのために必要な・・・実行していくこと” の部分は、正確にはWMとは別の認知機能である「実行機能 exective function」のことです。

2.認知の構えとマインド・ワンダリング

たし算を5問連続し、その後ひき算を5問連続して解く時間は、たし算とひき算を交互に10問行うのに比べて短時間で済みます。そのことは、なんらかの作業を行うのにはそれを行う「構え」をつくる必要があることを示唆します。それを心理学で「認知の構え cognitive set」とし、実在するものとして捉えます。この構えを形成するには「当面の課題が何であるかという課題目標が重要で、前述したようにWMが関連します。

一方、授業中に別のことに気をとられるといった、思考の逸脱現象があります。それはマインド・ワンダリング mind-wandering と呼ばれ、やはり、WMと関係があることが分かっています。マインド・ワンダリングの頻度は、遂行中の課題の成績に影響することが知られており、特に学習場面でのインパクトが甚大と考えられています。

以上のことから、WMはADHDといった特定の症状だけでなく、学習そのものと大きな関係があることが分かってきており、そのトレーニング方法の研究が注目を集めている訳です。

齊藤先生からはこの後、WMトレーニングに関する最新研究を実演を交えて、いくつか紹介されました。そのいずれもが研究途中のものであり、また、文章だけで紹介することは難しいです。そこで、その課題について、LD学会論文集から引用して、まとめに代えさせていただきます。

「WMトレーニングの効果は、トレーニングした課題に類似した課題には転移するが(近転移)、トレーニング課題とは処理の重複が少ないと考えられる課題には転移(遠転移)しない。ただし、こうした現象を統一的に説明できる理論は現時点で存在しない。」

「トレーニング効果がどのようなメカニズムで生起するのか、また、トレーニング課題はどのような認知機能をトレーニングしているのかといった理論的な問題については、まだ萌芽的な検討の段階にある。」

「(1)まず、トレーニングされる課題と転移課題(トレーニング実施後に施行されるトレーニングを受けていない課題)の詳細な課題分析が必要である。それぞれの課題に必要な処理過程を特定しなければ、何がトレーニングされているのか知るすべも無い。(2)また、トレーニングされる処理過程が明確になった場合にも、その処理過程が課題に特定的(specific)な処理過程であれば、他の課題への転移効果は見られないだろう。転移効果を検出するためには、課題に特定的な処理のトレーニングを最小限に留め、ターゲットとなる処理過程をトレーニングしなければならない。」

(五藤博義)

 

■ 連載 子どもの発達障害に向き合う保護者の方へ
第3回 言ってダメなら書いてみる
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発達障害のお子さんの中にはすでに療育に通っているというケースも多いと思います。でも、療育だけで毎日の生活が平和になるかというと、残念ながら難しいですよね…。

たとえば、子どもを叱ったところでなかなか効果がありません。そもそも耳から情報を獲得するのが苦手だったりするので、保護者が真剣にさとしても全く頭に入ってこない。うまく入ったとしても1回限りで、なかなか行動としては定着してくれない。ああしたらこうなる、みたいな文脈で捉えるのが難しいので、理屈で叱られても現実に投影できない。

理由はいろいろあれど、ガミガミやったところで保護者の叱り損になっていることが多いわけです。これでは子どもだけでなく、保護者も不幸ですよね。専門家に聞けば、子どもの特性に合わせたいろいろなアドバイスがもらえると思うのですが、そこはプロにお任せするとして。私がおススメするのは、誰でも今日から実践できる極めてシンプルな方法です。
それは、「紙に書く」。

ゲームは1日30分と約束して決めたなら、「ゲームは1日30分」と紙に書いて目に見えるところに貼ります。どんな小さなことでも書いたほうが効果的。
「5時までに宿題をやる」「寝る前に時間割をそろえる」などでもよいのです。
翌日の持ち物を書いて玄関扉に貼っておくのもおススメ。大人なら手帳にメモして管理したりすることを、張り紙で管理するスタイルです。口頭で何度も言うよりもずっと頭に入るうえ、言った言わないの話にならないので約束をめぐるトラブルも減ります。

また、前述のゲームのように時間制限があるものは、「終わりだよー」と声がけするのではなくタイマーを使用するのがベター。残時間が視覚的に分かるタイムタイマーもよいですが、一般的なキッチンタイマーでも十分です。

そして、気を付けたいのはできていない時に叱るのではなく、できている時に褒めること。できるのが当たり前と思わず、どんな小さなことでも思いっきり褒めてあげてください。これが次の“できた”への早道。叱るよりも褒めるほうが保護者の心理的な負担も少ないはず。お試しあれ。

(小林 みやび)

 

■ あとがき
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多くの小学校では昨日から3学期。お正月気分もそこそこに、年度末に向けて本格的な活動がいろいろなところで始まっているようです。
当社も心機一転、今月末の視覚認知バランサーの発売準備に向けて、精力的に活動を続けております。

次回のメルマガは視覚認知バランサーの発売日、3週間後の1月30日とさせていただきます。

本年も引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。