「大人の発達障害」を香山リカさんが語る

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2012.09.07

「大人の発達障害」を香山リカさんが語る

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■ 報告:「大人の発達障害」を香山リカさんとイイトコサガシが語る会
■ 連載:自閉症のトムくんの成長物語・10
■ グッズレポート:「ドキュメントファイル」
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■ 報告:「大人の発達障害」を香山リカさんとイイトコサガシが語る会
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精神科医の香山リカさんは数多くのメディアで発言を続けています。ダイヤモンド・オンライン誌に香山さんが書いた記事を、筆者がTweetしたところ、その真意を問うコメントが相次ぎ、その影響力に驚きました。

香山さん7月9日記事はこちら>>
筆者Tweetはこちら>> 

発達障害について専門家がチームを組み、支援する体制ができつつあるが、必ずしもうまくいっていない。かつての、ほとんどの人に知識がないままにそれぞれの困り感のある人が生きる場所を見つけられていた時代の方が、よかったのではないか?と読むことができる内容だったからです。

そんな香山さんが発達障害当事者の代表ともいえるイイトコサガシ(東京都発達障害者当事者会)代表の冠地情(かんちじょう)さんと対談をすると聞いて、9月2日に豊島区民センターに出かけていきました。

1.「大人の発達障害」の診断方法は確立されていない

精神科医の学会で、大人の発達障害の専門医がセッションを持つと必ず満員になるそうです。香山さん自身も聴講にいくとのこと。つまり、ごく一部の専門医を除いて、大多数の精神科医は「大人の発達障害」の診断や、適切な対処方法について十分な理解ができていないとのことです。

子どもについては、診断方法がある程度確立しており、また、療育方法なども確立しつつあります。他方、大人については多数の人が、外見からは社会に適応できているように見えるため、診断がきわめて難しいのが現状です。

2.うつや統合失調症、強迫性神経症の6割以上は、根っこに発達障害?

現在の精神科医の多くは、発達障害についてあまり知識のない時代に資格をとり、新しい知見を常時、吸収する余裕もないことから、患者の診察をして精神障害のどれかという診断をしてきたそうです。一時的に症状が軽減したかに見えてもしばらくすると別の症状を訴えるなどして、再度、精神科医にかかる人が少なくないそうです。

近年になって発達障害の知識を得るようになり、過去の症例を思い起こしてみると、それらの人が生活への不適応を訴えるようになる根っこには、発達障害があるのではないかと思えるようになったそうです。

その数たるや6~7割はそうかもしれない、と香山さんは語ります。

しかし、発達障害と診断することは、職場等での不利益を生む可能性が十分にあるため、治る病気という認識が一般的になってきた「うつ」と診断することは、患者本人の利益を考えると、必ずしもマイナスではないと思えるそそうです。

ただし、症状を一時的に軽減するだけの効果しかない薬のみの処方は、根本的な対処になっていないことも事実です。それだけに、より多くの精神科医が発達障害について理解を深めることが、喫緊の課題とのことです。

3.当事者について理解を深める

かつて精神科医は、患者との距離を縮めることは禁じられていたそうです。場合によっては強制入院などという本人の意思に反する処方をしなければならない立場であるからです。ただ、発達障害についての理解を深めるためには、当事者と交流する必要があると最近、考えるようになり、今回、多数の当事者が参加するこのイベントに登壇したとのことでした。

第1部の対談でこのように話された香山さんは、その言葉どおり、第2部のイイトコサガシの公開ワークショップに、参加メンバーの一人として参加され、絶妙な発言を連発して、聴衆の喝さいを受けていらっしゃいました。

※イイトコサガシのワークショップについては、かなしろにゃんこさんのマンガでの解説をご覧ください。
該当ページはこちら>>

※東京新聞にもこのイベントの紹介記事が9月3日に掲載されました。
記事(web版)はこちら>>

香山リカさんと冠地情さんという強力なタッグ(お二人は奇しくも大のプロレスファン)が、「大人の発達障害」という難問にどのように立ち向かっていくのか、今後、見守っていきたいと思います。

 

■ 連載:自閉症のトムくんの成長物語・10
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『見る時の3つの構え(2011年4月の記録)』

5ヶ月ぶりに会ったトムくん。ずいぶん成長したように見えるものの、どこがどのように成長したのか言葉にするのが難しい印象でした。

なぜなら、この数ヶ月でトムくんに起こった変化は『まなざしの注ぎ方』といった周囲の人の感受性を通してしか測定できない種類のものが多かったからです。

私が妹のジェリーちゃんやそのお友だちと遊んでいると、トムくんは近くでチラチラと様子をうかがっていることがよくありました。そんなトムくんからは、次の3つの『見る時の構え』のようなものが感じられました。

ひとつは、『できそうなところや 自分の知っている部分があったら参加しよう』という態度です。

私が遊びの途中でトムくんの知っている歌を身振りを交えて歌うと、仲間に入って踊っていました。以前にもそんな姿はありましたが、今回はより自然で積極的になった印象です。

もうひとつは、『相手が何をしているのか、さっぱりわからないことをしている時も、どうにかして理解したい、できるようになりたい』という態度です。これは以前のトムくんの態度には、ほとんど見られなかったものでした。

これまでのトムくんは、ゲームやごっこ遊びのようなトムくんにとって理解しずらい内容を目にすると、駆けて遠くへ行ってしまうか、 近くにいたとしても、まるでこちらのことが全く見えないかのような反応を示していました。

しかし今回は、『じゃんけんや幼児用のゲーム』『ごっこ遊び』『足し算と引き算』『工作』『対話の練習』というトムくんの苦手な遊びを繰り返す私のそばに、できるできないに関わらず参加する意欲を見せてとどまっていました。

おまけにこちらの期待を感じ取って、それに応えたいという思いをもっているかのように、私たちの遊びを観察した後で、半日ほど経ってから、自発的にそれをしようとし、一部分でも模倣できると、他の何ができたときよりも誇らしそうな笑顔を浮かべていました。

3つ目の構えは、『時系列で他人のしていることを捉えようとしている』ということです。

お父さんが昼食の準備をなさっていたとき、ひとつひとつの手順を順番通りていねいに観察する姿がありました。
(yoshikoさん宅ではご主人がお料理を担当することがよくあります)

自分の知っている一連の流れがある作業について、最初から最後まで、ワンステップずつ確認するように見ています。

ひとつの対象に長時間注意をとどめることができるようになってきたことが、トムくんの新たな好奇心の芽生えにつながりつつあるのかもしれません。
(未来奈緒美)
未来さんのブログ「虹色教室通信」はこちら>>

 

■ グッズレポート:「ドキュメントファイル」
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NHK教育テレビ「ハートをつなごう」で取り上げられた笹森理絵さんによって「片づけられない」特性が発達障害にある、ことを多くの人が知ることになりました。
※NHK ONLINE 福祉ネットワーク 放送記録はこちら>>

某大学の成人ADHD研究に協力したことで、ADHDと名乗る資格があることが分った筆者も、書類を探す時間が、集中して仕事をする時間よりも長いことの理由が見つかってほっとした一人です。

しかしっ、しかしです!理由はそうであっても言い訳にしかならないことも残念ながら事実です。そんな人には、自分を責めるよりも、それを手助けしてくれるツールが必要です、、、(汗)

ということで、SNSヴァラエティカフェのアクティブユーザーである金井悠紗(かない ゆうさ) さんお勧めの「ドキュメントファイル」が、片づけられない筆者を含む多数の人の Assistive Technology になることを願って今回、ご紹介です。

ヴァラエティカフェ・グッズレビューはこちら>>

レビューを読めば読むほど、これは強い援軍、と思えますよね。

もう一点、筆者からアドバイス。
前述の香山リカさんもおっしゃっていました。片づけられない人は、片づけないのではなく、「100%片づけよう」とするので、それができないとなると、ギブアップしてしまうのだそうです。

キーワードは、「ほどほどに」。ドキュメントファイルの活用と合わせて、提案させていただきました。(自戒、、、汗)

レヴュアー:金井悠紗

 

■ あとがき
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東京・町田ではいまだに猛暑が続いています。お互い、適切に休みをとりながら、厳しい残暑を乗り切りましょう。

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