特総研セミナー「特別支援教育のさらなる進展」

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2011.02.04

特総研セミナー「特別支援教育のさらなる進展」

1月29日神奈川県大和市で開かれた第2回こども発達支援シンポジウムに参加しました。大和市に関係のある登壇者によるシンポジウムと大和市の特別支援学校、障害児施設、NPOなどが一堂に会したポスター展示というユニークな催しです。全市が連携して子どもに関わる環境を整備しようというもので、市長の開会の挨拶で紹介された独立部門「こども部」の存在といい、すばらしい市の政策ではないかと思います。

大和市こども部 http://www.city.yamato.lg.jp/web/seishou/index.html#

シンポジウムも、コーディネーターの滝坂信一・東京農大教授(神奈川県広域特別支援連携協議会委員長)のシンポジストへのつっこんだ質問など大変興味深い内容でした。時宜をみて、後日このシンポジウムの内容もご紹介したいと思います。

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【目次】
(1)特総研セミナー・レポート「特別支援教育のさらなる進展」1
(2)mayaさんの「スクールカウンセラー奮闘記」13
(3)おすすめコンテンツ「神様のカルテ」

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(1)特総研セミナー・レポート「特別支援教育のさらなる進展」1

今年4月から改訂された学習指導要領に基づいての学習指導が小学校で始まります。特別支援学校や通常学校の特別支援学級、通級においても同様です。いったいどのようなものに指導が変わっていくのか、国の専門機関が実施するセミナーを何回かに分けてレポートしたいと思います。

国立特別支援教育総合研究所、略して「特総研」は障がい児の教育に関する日本の唯一のナショナルセンターです。学習指導要領に基づく指導の開始に備えて、700名の全国の特別支援教育関係者を集めて、1月28日29日の2日間、国立オリンピック記念青少年総合センターで行われました。

テーマ:特別支援教育のさらなる進展へのチャレンジ-学習指導要領改訂にあわせて-
1.シンポジウム:特別支援教育のさらなるチャレンジ-現状の把握と今後の展望
2.講演:学習指導要領と学習評価
3.分科会
第一分科会:障害のある子どもとない子どもが共に学ぶ
第二分科会:特別支援教育におけるICT活用の在り方
-障害の重複化・多様化への対応-
※ICTは、情報通信技術のことです。

平成22年度国立特別支援教育総合研究所セミナー1
http://www.nise.go.jp/PDF/H22semmner1_annnai.pdf

まず、今号と次号の2回で安彦忠彦・早稲田大学大学院教授(中央教育審議会委員)の講演を紹介します。

この講演は、幼小中高や特別支援学校という全校種に共通する、新学習指導要領の改訂のポイントを示すという位置づけです。

改訂の背景は、次の3点です。
(1) 日本の歴史的位置の変化
諸外国へのキャッチアップが終わり、覚えて まねる(記憶力)から新しいものを生み出す(思考力)重視の教育へのシフト。これは、前回の指導要領の改訂の方針を維持。
(2) 日本社会の教育力の衰退
地域と家庭の教育力の低下を補う、社会全体の取り組みによる教育再生に取り組む。
(3) 国際比較上の変化
OECDのPISA(国際比較調査)の学力観と学力の低下傾向。

(3)は特に重要です。社会に求められる、主要能力:キー・コンビテンシーは「単なる知識や技能だけではなく、技能や態度を含む様々な心理的・社会的なリソースを活用して、特定の文脈の中で複雑な課題に対応することができる力」と定義されました(中教審答申)。

OECDにおけるキー・コンピテンシー http://bit.ly/aBmkpj

例えば、読解力では「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」となります。従来、日本で読解力が指した内容は、国語的な理解でしたが、ある意味で、教科を越えた実社会での問題処理能力ということができます。また「書かれたテキスト」には、文字だけでなく、図や表、イラストも含まれます。

そして、それら三項目を実現するための、新学習指導要領の趣旨は、7点に集約されます。

(1) 改正教育基本法を踏まえた改訂
義務教育の重視と道徳教育の重視。
(2) 「生きる力」という理念の共有
「実社会・実生活に生きる力」に焦点を当て、時間数、学習形態等を改善。
(3) 基礎的・基本的な知識・技能の習得
思考力のみを目指すのでなく、基礎と思考のバランスを重視。

2000年と2003年のPISAテストで読解力で世界一になったフィンランドは国内で読み書き能力の低下が問題になり、基礎・基本に当てる時間数を増やしたそうです。日本でも思考力を重視しつつ、基礎・基本の時間数を増やすことになりました。

(4) 思考力・判断力・表現力等の育成
「総合的な学習」を主、教科学習を副として育成。

※「総合的な学習」は前回の指導要領の改訂で、教科時数を削減して新設された時間で、課題(プロジェクト)を設定し、それに取り組むことで思考力等を伸ばすことを目的として活動を行う。

(5) 確かな学力を確立するために必要な授業時数の確保:長期休暇の短縮時数増は、基礎・基本の習得よりも、思考力等の育成に用いる。

「学力の確かさ」は、三つの面から実現します。
ア.知識・技能(正確さ)
イ.思考・論理(確実さ)
ウ.内省・吟味(確かめ)

中教審委員の市川伸一・東大教授は、学習を習得型、活用型、探究型という3つのタイプに分類することを提唱しています。教科の時間では基礎・基本を習得型で学習し、発展的内容を活用型の学習で行います。さらに、総合的な学習の時間で、探求型の学習をすることで、確かな学力を身につける、という構造です。

※上記は安彦先生の講演内容です。市川先生自身は、活用は型ではないがとして、以下の本で、その辺りを解説しています。

「『教えて考えさせる授業』を創る」 市川伸一著、図書文化、1470円税込
http://amzn.to/ihqIu6

(6) 学習意欲の向上や学習習慣の確立

志水宏吉・大阪大学大学院教授は、著書「学力を育てる」で、調査に基づき学力と相関があるのは親の収入でなく、学習習慣の形成の有無だと明らかにしています。

「学力を育てる」 志水宏吉著、岩波新書、700円税別
http://bit.ly/elwAtG

(7) 豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充実

新指導要領では、各教科のすべてで、それぞれの教科の特質に応じて、道徳について適切な指導をすることが明記されています。ただし、安彦先生は、各教科の本来の目標を実現することが優先されるべきで、その指導を全体として「道徳臭く」することではないと明言されました。

次回は、学習評価の改善の狙いを解説します。

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(2)mayaさんの「スクールカウンセラー奮闘記」13

<これまでのあらすじ>
アスペルガー症候群の状況と推定され小学校1年からずっと教室に入れず、休み休みながら保健室への登校を続けてきたA子。中学校に入学し、なんとか教室登校からスタートしましたが、2学期からは教室に入ることが難しくなり、校内の別室「ふれあい教室」から少しずつ授業への参加を始めました。
1年3学期が終了する頃には、午前中の授業に参加できる程度の持久力がついてきました。2年生になり少しずつ自分と向き合い始め、進路を考えるようになりました。3年7月には、専門学校への進路に決意を固めました。

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3年生の10月、A子は、受験の中で一番苦手な面接試験に向けた取り組みを始めました。知らない人と話すことを嫌っていたA子に、写真を見せてオープンキャンパスを訪問した際に挨拶した人と面接することを説明しました。
A子は、キャンパスで会った人から好意的に励まされたことは忘れていましたが、良いイメージの記憶は残していました。このことが練習を始める大きな要因となりました。

まず、面接で想定されるいくつかの質問に対する返答を作文しました。
(1)中学でどう過ごしてきたのか?
(2)当校(専門学校)を志望した理由は?
(3)教室に入れなかった理由は?
このようなテーマで作文することは、面接試験の準備という名目がなければできないこと。A子に考えて欲しいテーマでもあります。A子は原稿用紙に向かい、自分の気持ちを整理するように言葉を選び、文章をつないでいきました。一度書いたら国語の先生に見てもらい、アドバイスをもらって、書き直しを2度ずつ行いました。

作文を書き進める作業を通し、3つのテーマについて考える体験的刺激は、A子にとっては、自分に起こった出来事を文字にすることで、距離を置いて第三者的に見つめる作業でもあります。これまで“他人のせいで”と言ってきたことが、作文ではいつのまにか自分の問題として語られていました。面接試験の想定という前提があることで、面接官が作文をどう読み、印象を持つのかを考えることができた訳です。

この作文の内容を覚えてから、校長先生に面接官になってもらい、模擬面接を実施しました。さらにもう一度模擬面接を行い、本番に備えました。さあいよいよ専門学校の受験です。

次回は、専門学校の受験から帰ってきたA子の奮戦記を紹介してゆきます。
(文責:maya)

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(3)おすすめコンテンツ「神様のカルテ2」

今年8月に櫻井翔、宮崎あおい主演で映画公開される「神様のカルテ」の続編です。前作は本屋大賞を受賞しています。

映画公開予定 http://www.toho.co.jp/movie/

松本の夜を煌々と照らす「24時間、365日」の巨大サイン。救急外来で地域住民の生活を守る総合病院が小説の舞台です。市民にやさしい反面、医師には大きな負担となります。主人公、栗原一止(いちと)の大学時代の親友は、やはり医師である妻が病院に泊まり込むなど家庭を顧みなくなり、子どものことを考えて、東京の有名病院を辞めて、主人公の勤める本庄病院に移ってきます。しかし、地方の総合病院には、都心の病院以上の負担が求められる現実があります。子どもとの生活を優先しようとする友人と、患者のことを最優先に考える看護士たちの間に挟まれて、主人公は頭を悩ませることになります。

一方、ほとんど休みを取らないで患者に接し続けてきた内科副部長が倒れ、治療には手遅れの病状であることが分かります。副部長と大学時代の友人でその病院の救急医療を30年以上に渡って支えてきた部長の言葉から、副部長が妻と知り合った常念岳にもう一度登りたいと常々願っていたことを知った主人公たちは、、、

現役医師ならではの視点で医療の問題点を描写しながら、美ヶ原(うつくしがはら)、王ヶ頭(おうがとう)、御嶽(おんたけ)など信州の美しい自然を背景に、生死の境で浮き彫りになる人間の思いで、つい目頭が熱くなってしまう物語です。

「神様のカルテ2」夏川草介、2010年10月発行、小学館、
46判320ページ、1470円(税込)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784093862868

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後2日で、島田療育センターの公開シンポジウムです。広島市の小中学生14名がこども脳機能バランサーを使った活動でどのように行動変容したのか、mayaさんの実践から紹介します。合わせて現在実施中のアンケートの利用者の声も紹介させていただきます。

http://www.shimada-ryoiku.or.jp/info/H22sympo.html

次号は、2月18日(金)です。

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