発達障害の子どもたち

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2010.08.27

発達障害の子どもたち

前の土日に富山で開かれた全国特別支援学校知的障害教育校PTA連合会大会に参加してきました。富山県は特区として、高齢者や障がい児が一緒に過ごすデイサービスの試みを行っています。障がい者の就労にも様々な形で取り組んでいて、とても参考になりました。

数日で長かった夏休みも終わります。私の地元、東京都町田市では授業日数の関係で、30日から中学校が始まり、初日に「振り返りテスト」をします。
宿題の仕上げとテストの準備で、夏休み気分から切り替わりつつある中学生にならって、暑い毎日を克服していきたいと思います。

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【目次】
(1)子どもの認知発達を応援する機関・2
(2)mayaさんの「スクールカウンセラー奮闘記」2
(3)おすすめコンテンツ「発達障害の子どもたち」

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(1)子どもの認知発達を応援する機関・2

子どものことが気になり始めたらどこに相談すればよいのか、前回は就学前の子どもに関して機関等を紹介しました。今回は就学後の子どもや保護者を支援する制度や体制の紹介です。

●保幼小連携制度

小一プロブレムという言葉があります。小学校に入学したばかりの子どもが教室の中にじっとしていられず、歩き回ったりして授業が成立しないという現象です。この現象が2002年頃多発し、保幼小連携の必要が叫ばれて、様々な形で、保育園あるいは幼稚園から小学校へ申し送りがなされる制度ができました。自治体により大きな違いがあり、特定の子どもについて書類を送付したり、子ども全員について園で文書を用意し、その内容を保護者に確認してもらったものを小学校に送る場合もあります。ここでの園の評価によって保護者が子どもの状況に気づいたり、その資料が専門機関に相談する際に過去の状況を把握するために活用できたりします。小学校に入ったばかりのお子さんのことが気になったら、自治体に確認してみましょう。

●小学校と特別支援学校

前号で紹介したように就学先はどうあるべきかが問題になっていますが、現在は2007年から施行された学校教育法に則って運用されています。具体的には、文部科学省の「就学の基準と手続き」に基づき、自治体の教育委員会が就学先を小学校か、特別支援学校かを決定します。小学校の場合は通常学級か、特別支援学級かを決められます。また、通常学級の場合も一部の時間に「通級による指導」を受けると判断される場合があります。これらの判断は就学の前年の秋頃に実施される「就学時健康診断」等に基づいて行われます。また、毎年学校で行われる健康診断によって、進級の際に見直しが行われます。なお、通級教室は、複数の小学校ごとに1校が設けられ、該当する児童は、所定の時間にそこに通うことになります。

特別支援学校は、盲、聾、肢体不自由、知的障害、病弱に分類されています。特別支援学級は、障がいの種類ごとに設けることとされ、自閉症など発達障がい児が多く所属しています。特別支援学校で1学級6名まで(文科省資料で平均3名)、同学級で1学級8名まで(同3名)となっています。

文部科学省 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.htm

●学校での支援体制

通常学級での指導に携わるのは学級担任です。その他に、自治体の規定や児童の症状に基づいて設置される特別支援教育支援員がいます。また、特別支援教育主任をおく小学校があり、その場合はある程度の専門知識をもっていると考えることができます。他に関連する担当として、教育相談主任、生徒指導主任、教務主任があります。

また、保健室に待機する養護教諭が、発達障がい等を自主的に勉強している場合は頼りになります。他に子どもが図書館(室)が好きで通っている場合常駐する司書は子どもの実情を把握している可能性があります。

教育委員会の所属で、担任の要請に基づいて相談に乗ってくれる存在としてスクールカウンセラーと特別支援教育コーディネーターがいます。特別支援教育コーディネーターは各学校に1名、教職員から選任されています。教職員と兼務が大半ですが、学校の特別支援教育の外部との窓口となり、頼りになる存在です。

この他に自治体により「巡回指導員」という制度があって、県職員の特別支援学校の教員や大学の先生等が特別支援教育の相談・指導に当たっています。

また、通級学級の担当教諭や、改正学校教育法で地域の小学校のセンター的機能を果たすように位置づけられた特別支援学校の担当者も、専門家として期待できます。さらに埼玉大学のように特別支援教育を研究するセンターを設け県内全域の相談に応じるサービスを行っている場合もあります。

特別支援教育臨床研究センター「しいのみ」
http://www.saitama-u.ac.jp/fuyou/shien/1-top%20page.html

参考文献:はじめての特別支援教育、柘植雅義他編、有斐閣

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(2)mayaさんの「スクールカウンセラー奮闘記」2

<前号のあらすじ>
小学校に通う娘が1年からずっと教室に入れず、保健室への登校を休み休みながら続けていて、6年生2学期の今も同じ状況だと、母親から相談がありました。このように、A子と母親との面接が始まりました。

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まず母親とのカウンセリングを行いました。母親によると、A子さんは、家では元気で好きなことをして過ごしている。ペットの犬や猫の世話を親身にしている。「もう、私(母親)の言うことは聞いてくれない」と、手に負えない状況であることを説明してくれました。時にはA子さんに、学校に行っておかないと進学が難しくなると話しかけることもありました。しかし、全く無視しているか、あるいは感情を吐き出すように急に怒り出すので、話し合いにはならなかったそうです。

そんな状況を見ていた父親が、A子を叱り飛ばして学校に行かせたこともありましたが、学校に行くのは3日と続きませんでした。父親はこの繰り返しに怒り、ノートなどの学習用品を一度捨ててしまったことがあります。A子もその時は怒り暴れましたが、しばらくすると、好きなペットと和んでいました。

A子はペットの犬や猫のことになると人が変わったように過敏になります。A子のこだわりはペットにあります。食事となる食材(餌)が少なくなると買ってきてというなど、こまめに管理し、毎日散歩に連れて歩いています。夜に両親が寝た後で、インターネットで猫を飼っている人のプログを見ることを楽しみにして、夜遅くまで起きているようです。そのため、朝は両親が出かけた後に起きてくるといった生活リズムになっています。こんなA子にどう接していけば良いのか、と母親は悩みを語ってくれました。

まずはそんな様子を振り返ってもらいながら、親子の間に負の感情の連鎖が発生している状況を確認し、親子のコミュニケーションが怒りの表現で行われていることに、母親が気づいていくことのお手伝いをしました。母親からカウンセリングに行ってみないかと誘ってもらいましたが、A子はそれには応じてきませんでした。

多くのケースでは、このように母親等の家族を通じて間接的に本人に対するアプローチを実施していきます。どうやらA子さんとは中学に入学してから会うことになりそうです。それまでに、もう少しA子さんが母親とコミュニケーションが取れるようになり、元気が育つように言葉掛けのお手伝いを続けていきました。

A子さんは診断名が出されている訳ではありませんが、家庭や小学校での様子から自閉症スペクトラムと呼ばれる発達障がいの、アスペルガー症候群であると見立て(現状分析から症状を推定)をし、支援計画を立てました。

具体的な行動目標はまず、母子がケンカせずに会話ができることです。朝の言葉掛けの「学校に行きなさいよ!家にいるのなら、洗濯物をいれておきなさい」を「行ってきますね。できたら洗濯物を取り込んでおいてくれたら助かるわ」などのお願い言葉にすること。次は、夜の言葉掛けの「早く寝なさいよ。明日、早く起きれなくて学校に行けないよ」を「おやすみ。体調を崩すから早く寝ようね」など体調を気づかう言葉にすることです。

このように母親を通じてのA子へのアプローチが始まりました。小学6年2学期から小学6年3学期まで、負の感情の連鎖を断ち母子のコミュニケーションの改善をめざした取り組みを進めました。時にはトラブルが起こり一進一退を繰り返しながら、小学校卒業の頃までには母子がいっしょに買い物に出かけたり、趣味のペットの話をしたりするまでになりました。母子が協力して取り組みを進める土台ができつつありました。

次回は、A子の中学入学時の支援の取り組みを紹介します。ここでは、周囲の状況が分かりにくいA子の問題に対して、情報処理能力の向上のための認知能力の訓練(こども脳機能バランサーも含めて)も紹介します。

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(3)おすすめコンテンツ「発達障害の子どもたち」

「治る子と治らない子、その違いはどこに?」講談社現代新書の帯の、問題提起の一文が目をひきます。2007年12月の初版以来、15万部突破という発達障害のバイブルの一つといってよい名著です。著者は病院や保健センターでの豊富な臨床経験に基づいて、発達障害について解説していきます。

本書のカバー範囲の広さを示す章題を記載します。

第一章 発達障害は治るのか
第二章 「生まれつき」か「環境」か
第三章 精神遅滞と境界知能
第四章 自閉症という文化
第五章 アスペルガー問題
第六章 ADHDと学習障害
第七章 子ども虐待という発達障害
第八章 発達障害の早期療育
第九章 どのクラスで学ぶか-特別支援教育を考える
第十章 薬は必要か

以下に、本書に盛り込まれた著者の思いが伝わる部分を引用してみましょう。

第二章より引用 著者の発達障害の定義
「発達障害とは、子どもの発達の途上において、なんらかの理由により、発達の特定の領域に、社会的な適応上の問題を引き起こす可能性がある凹凸を生じたもの」

「発達障害に対する誤った知識を減らし、どのようにすれば発達障害を抱える子どもたちがより幸福に過ごすことができるようになるのか、正しい知識の紹介をする目的で書かれている。」

そして、その思いが科学的データや著者の鋭い考察で、具体的に展開されていきます。

講談社現代新書、238ページ。定価720円(税別)
アマゾンページで、内容が少し読めます。http://amzn.to/bzxatK

関連書では、「発達障害の豊かな世界」日本評論社2000年刊、は著者自身が発達障害を巡るテーマをほとんど盛り込んだ、と語るエッセイ集です。
ブログ「アスペルガーな日常」 http://asdaily.exblog.jp/5860798/

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メルマガをお読みいただき、ありがとうございました。

次号は、9月10日(金)です。

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